浮気・不倫慰謝料を請求した場合の反論とは? |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

浮気・不倫慰謝料を請求した場合の反論とは?

不倫慰謝料でよくある反論

浮気・不倫慰謝料を請求をした場合に素直に謝罪し、慰謝料を支払ってくれるケースはかならずしも多くありません。

むしろ、浮気、不倫を否認されたり、お金がないとして支払ってもらえないといった場合があるでしょう。

そこで、この記事では、浮気・不倫慰謝料を請求した場合に相手方から想定される反論とそれに対してどのような対策をしていくべきなのかを解説させていただきます。

不倫慰謝料請求をしたいのですが、相手方が支払わないといってきています。どうすればよいのでしょうか。

弁護士の回答

いかなる理由により支払いを拒否しているのかを確認しておきましょう。

反論が正当なものなのかを検討し、示談交渉、裁判でどこまで通用するのかを検討しておきましょう。

訴訟では、証拠が大切な役割を果たすので、弁護士とよく相談し、具体的な手続きを進めていくとよいでしょう。


1 浮気・不倫慰謝料を請求した場合にありえること

法律上の請求が認められるためには、民法上の要件を満たすことが必要となります。

慰謝料請求を受けた場合に、支払いを免れるために、法律上の要件を満たさないといった主張をすることや単なる事情を伝えてくる場合があります。

そこで、弁護士などの法律の専門家から相手方の主張は、慰謝料請求を基礎付ける請求原因を否認しているものなのか、相手方が請求原因に対する抗弁を主張してきているのか、それとも単なる事情を主張しているのかを検討することとなるでしょう。

慰謝料を支払いたくないといった話の中はどのような位置づけなのかを整理し、対応策を検討していきましょう。

2 典型的な反論の手段

浮気相手などが弁護士を立ててきていた場合には、一定の整理された反論がでてくることがあります。

しかし、本人で対応されている場合には、どのような趣旨で反論しているのかがわかりにくい部分があります。

そこで、典型的な反論の事例を紹介させていただきます。

(1)不貞行為をしていない 不倫の否認

 

不貞行為に基づく損害賠償請求権が請求原因として成り立つためには、不貞行為が存在したことが必要となります。

そこで、浮気相手としては、不貞行為がないと主張してくることがあります。

不貞行為があったか、なかったかの水掛け論となった場合には、不貞行為の証拠がなければ、事実は認められません。

裁判所は、自ら利益となる事実を主張する側に立証する責任をおいており、不貞行為があったかなかったかは不貞慰謝料を請求する側の責任となります。

そのため、不貞行為の証拠が十分にない間には、不貞行為をしていないとの反論が有効に機能とする場合があります。

慰謝料請求をする側としては、加害行為である肉体関係や婚姻関係の平穏を害する事実があったのかどうかを、写真・動画、SNSのメッセージ、興信所の調査報告書、クレジットカードの利益、日記、手帳などの証拠から立証できるだけの準備をしておくこととなります。

請求をされた側としては、相手方はどのような証拠を持っているのかを想定していき、単に食事に行ったに過ぎないなど疑いを晴らすための証拠が残されていないかを探すこととなるでしょう。

(2)結婚していることを知らなかった 故意の否定

 

不倫慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求権として民法709条の要件を満たすことが必要となります。

民法は損害を与える行為があったとしても、結果の発生を認識しながらあえてその行為を行った場合(故意)や結果を回避すべきなのにその行為をしなかった場合(過失)があったときにはじめて損害賠償請求が認められます。

・不貞慰謝料での故意とは、配偶者がいること、婚姻関係が破綻していないことという事実を認識していたかどうかと考えられます。

職場や知り合いの関係であれば、結婚をしている事実を認識していたとは立証することが比較的容易となるでしょう。

一方で、出会い系サイトであった場合や独身であると積極的に偽っていた場合には、故意が直ちに認められるかが争点となることがあります。

すべての案件で、故意があると直ちにいえる証拠を有しているわけではありませんが、相手方から反論として想定されるとして対策を考えておくことが大切となるでしょう。

・不貞慰謝料での過失では、配偶者がいること、婚姻関係が破綻していないことを認識すべきであるのに不注意であるために結果発生を認識しないでする心理状況をいうと解されます。

一般人の注意義務があれば、婚姻していることを知り得た場合には、過失があったと判断されることとなるでしょう。

裁判例によっては、独身者が参加と考えられるお見合いパーティーで出会ったこと、交際期間中に氏名、年齢、住所、学歴などを偽り、一貫して独身であるかのようにいつ会わっていた場合には、婚姻していることを認識することが困難であるとして過失があったと評価することができないとした事例が存在します(東京地方裁判所平成23年4月26日)。

したがって、出会って経緯、周囲の事情から故意、過失があるのかどうか、立証ができるのかを弁護士と検討しておくとよいでしょう。

 

(3)セクハラであった・無理やり性行為がなされた

 

不貞行為とは、配偶者以外の者との肉体関係をもつことをいいますが、その性的関係が無理やり迫られたものであると主張がなされることがあります。

会社の上司や上の立場の者、年齢差がある場合には、無理やり性行為があったものであるため、不貞行為に基づく損害賠償責任を負わないと主張がなされることがあり得ます。

このような事案の場合には、強制性交罪の成立があるのかどうかなどセンシティブな問題となります。

交わされたメールのやり取り、親密なやり取りが継続している場合、強制性交があったとすればおよそあり得ない行為が継続していたなどの事情があった場合には、不貞行為に基づく損害賠償責任を負わないと判断されることがあります。

セクハラを受けていたのみといったことで、直ちに無理やりの性行為とまでいえるかは立証上は問題があるでしょう。

したがって、相手方からこのような主張がなされた場合には、証拠がどこまで存在するのか、強制性交などがあったとすればおよそ想定できないメッセージのやり取りが存在するなど反対の証拠を出すことを検討することがあるでしょう。

 

(4)夫婦関係が前から破綻をしていた場合

 

最高裁判所平成8年3月26日判決においては、甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。

けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからであると判断されました。

この最高裁を援用する形で、婚姻関係の破綻をしていたとの主張がなされるケースが多くあります。

婚姻関係の破綻が肯定される事例としては、離婚の意思が表明され、既に長期間の別居に至るなどは破綻していることが明確な場合には、夫婦婚姻関係が破綻していたといえることがあります。

しかし、婚姻関係の破綻は厳格に判断がなされることが多く、損害賠償金が全くないと判断されるケースは少ないでしょう。

むしろ、婚姻関係が悪化していたなどの事情により、慰謝料の認容金額が減額される形で調整されることが多いでしょう。

したがって、婚姻関係を破綻していたことが明らかといえるレベルの証拠がない限りは慰謝料を完全に否定する理由にはなりにくいこととなります。

 

(5)不倫の時点から時効が経過している:消滅時効

 

民法724条によれば、不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅することを規定し、

① 損害および加害者を知ったときから3年が経過したとき

② 不法行為の時から20年間権利行使がないとき

とされています。

消滅時効の制度は、長期間にわたり権利行使が可能であるとすると権利関係が不安定となること、反論の証拠を提出することが困難となること、権利行使が可能でありながら長期間権利行使をしない者を保護する必要性が低いことから認められると考えられます。

被害者が損害を知ったときとしては、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な程度な状況のもとに、その可能な程度にこれを知ったときを意味するものと解するのが相当であるとして、不貞行為の事実と加害者の住所氏名を知ったときが想定されます(東京地方裁判所平成24年6月19日、最高裁判所平成14年1月29日判決参照)

不貞行為に基づく慰謝料請求権については、離婚が問題となるなどとして、不倫の時点から時効が経過しているとの判断がなされるおそれがあります。

したがって、離婚についてと同時に不倫慰謝料請求を準備しておくことが大切となるでしょう。

 

(6)枕営業であった

 

特殊な反論ではありますが、風俗嬢などとの不貞行為の場合には、顧客との性行為は反復継続していたとしても、枕営業であるとして、顧客の性欲処理として商売として応じたにすぎず、何ら婚姻共同生活の平和を阿木するものでないとして、不法行為を構成するものではなく、精神的苦痛を受けたとしても損害賠償責任を負うものではないと判断された事案が存在します(東京地方裁判所平成26年4月14日判決)。

一方、店舗内での肉体関係については不法行為とはならない一方で、店舗外での肉体関係は不法行為にあたるとして、婚姻共同生活の平穏を害するものと判断されることがあります(東京地方裁判所平成27年7月27日判決)。

したがって、商売として性的関係をもっていたにすぎない場合には、不法行為責任を負わない可能性はありますので、性的関係を持った者との関係を分析することが大切となるでしょう。

 

(7)お金がないために支払ができない

 

お金がないとして不貞行為に基づく損害賠償金を支払うことができないとの主張がなされることがあります。

金銭債務については履行不能が想定ができないため、お金がない、収入がないからといって法的に支払いが免れるわけではありません。

そこで、法的に債務の支払いが免れるためには、債務整理手続きにより免責手続きなどを受けることが必要となります。

一方で、お金がない場合には、強制執行によりどこまで回収ができるのかを検討することとなります。

給与債権の差押えについては、給料から税金等を控除した残額の4分の1までとなることがあります。

そのため、裁判所での強制執行手続きを経たとしても支払える金額は限られているとして、分割支払いの交渉、回収可能性を考えて減額が求められることがあります。

したがって、支払ができない場合については直ちに支払義務が免れるわけではありませんが、分割支払いなどの和解となる可能性はでてくることがあるでしょう。

 

3 まとめ

 

このような案件で慰謝料を請求した場合の反論としては様々争点が想定されます。

慰謝料請求を適切に行うためにも、現在押さえている証拠、事情をきちんとして弁護士と相談をしていくとよいでしょう。

天王寺総合法律事務所では、浮気、不倫慰謝料問題の法律相談、示談交渉、裁判対応を行っておりますので、ぜひお気軽のお問合せください。

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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