ダブル不倫で慰謝料請求はできないのか?
慰謝料を請求したいダブル不倫であった場合には、慰謝料を請求することはできないのでしょうか。
■ ダブル不倫では慰謝料をどちらに請求したらよいのか。
■ ダブル不倫では慰謝料の損害は変わるのか。
■ そもそもW不倫とはどういうことなのか。
悩まれることがあるかと思います。
そこで、このコラムでは、ダブル不倫(W不倫)の場合の慰謝料請求をすることができるのかどうかについて大阪・堺出身の弁護士が解説させていただきます。
しかし、個別の事案によって対応は異なってきますので、まずは弁護士と相談し、離婚・慰謝料、請求の方法などについてご相談されることオススメ致します。
Contents
ダブル不倫とは何か。
ダブル不倫(W不倫)とは、法律上の用語ではありません。
ダブル不倫とは、不倫をしている当事者の両方に配偶者がいる場合のことを指します。
例えば
夫Xさんと妻Yさんとが結婚関係にある。
相手方夫Aさんと相手方妻Bさんとが結婚関係にある。
妻Yと相手方夫Aとが不貞行為を行った場合が典型例となるでしょう。
このような場合には、それぞれが法律上の要件を満たす場合には、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことが可能となります。
それぞれが離婚をして、まったく別家計のなってしまう場合には、それほど問題がないことはあります。
一方で、片方は離婚するが、片方は離婚をしない場合など、受け取る慰謝料の金額と支払う慰謝料の金額次第では、離婚をしなければ家計から支払っているのみとなってしまうなど、慰謝料請求を事実上すべきかどうかを検討しなければならない事態が存在します。
不法行為に基づく損害賠償請求権ができる場合とは
(1)不法行為の成立要件について
浮気や不倫があった場合には、いつでも慰謝料請求ができるわけではありません。
行われた内容が、民法709条での不法行為に基づく損害賠償請求権として成立をしていることが必要となります。
民法709条では、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じる損害の賠償を行うことが規定されています。
① 故意 又は 過失
② 他人の権利または法律上保護されている利益を侵害する加害行為
③ 損害の発生
④ 加害行為と損害発生との因果関係
が必要となります。
(2)相手方Aに故意・過失があるのか
妻Yと相手方夫Aとが不倫をした事例で考えてみましょう
相手方夫Aが損害賠償責任を負うためには、
故意とは、自己の行為が他人の権利を侵害し、その他違法と評価される事実を生じるであろうことを認識しながら、あえてこれをする心理状態のことをいいます。
相手方Aが、夫Xと妻Yとの婚姻関係を知っていた場合には、この条件は満たすこととなりますが、まったく結婚していることを知らなかった場合や独身していると誤信していた場合には問題となります。
では、結婚していることを知らなかった言いさえすれば、損害賠償責任を免れるのかというと、過失が認められることはあり得ます。
過失においては、その事実が生じるであることを不注意のために認識しない心理状態のことをいい、通常人の判断能力をもって結婚していることを認識することができなかったどうかなどから判断がなされます。
独身が前提である婚活パーティーで出会っている、独身である旨の説明をしてメールなどが残っている場合があるときには、過失が否定されることはありますが、一方で、会社で知り合っている、近所に住んでいる、子どもがいることを知っているなど、一定の交際関係から通常人の判断能力で結婚していることを知り得たのではないかと判断されることはありえます。
(3) 妻Yに故意・過失はあるのか。
夫Xと妻Yとは夫婦関係にあるため、XからYに対する損害賠償請求では故意、過失はあまり問題とはなりません。
問題となるのは、相手方妻Bから妻Yに対する不法行為に基づく損害賠償請求権が成立するのかどうかにおいていう点、すなわち、妻Yに相手方ABが夫婦であったのかどうかについて、故意・過失があるのかどうかとなります。
・故意・過失があった場合には、相手方妻Bが不貞行為の事実を知った場合には、請求が想定されますし
・故意・過失がない場合には、相手方妻Bが不貞行為の事実を知ったとしても、請求が証拠上は困難である場合があり得ます。
Xの立場としては、配偶者Yがどこまでのことを認識して、不貞行為に至ったのかどうかを把握しておくことが望まれるでしょう。
したがって、W不倫の場合に請求する側となった場合には、結婚していることを相手方がどこまで知っていたのかは損害賠償請求権を主張するうえで大切な要素となるでしょう。
(4)不貞行為が存在するのか
不貞行為が存在するのかどうか、不貞行為の証拠があるのかといった点も問題となり得ます。
ここでの不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことなど夫婦婚姻関係の平穏を害することをいうものと考えらえます。
端的には、肉体関係、性的関係のことをいうと解されるでしょう。
そして、不貞行為が認められるためには、探偵事務所での調査報告書、ラブホテルを利用していることを推測させる写真や動画、メールやLINEのメッセージ、宿泊施設でのクレジットカードなどから肉体関係が推測されるのかによります。
夫Xから妻Yと相手方夫Aに対して、不貞行為に基づく損害賠償請求を行う側には、十分な証拠が揃っている場合は考えられます。
一方で、相手方妻Bは、不貞行為についての証拠が所持していないことはありえます。
Xからの請求との関係では、妻Yと相手方夫Aとの不貞行為が認められているとしても、相手方妻Bと相手方夫A・妻Yとの関係で裁判上も不貞行為が認められるとは限りません。
既に証拠により不貞行為があったとの判決や和解書が作成されている場合には、不貞行為を推測させる有力な証拠となりますが、任意段階で慰謝料を支払った場合などではなこれらの証拠を相手方妻Bは入手することができなかったために、請求が困難となってしまうことがあります。
したがって、不貞行為を推測させる証拠が相手方の請求側がどこまで入手できるのかによっても事情は異なってくることとなるでしょう。
双方から請求がなされた場合、損害額などで違いはあるのか。
(1)理論上は双方からの請求が循環する可能性はある
① 夫Xは 不貞行為を行った 妻Y と 相手方夫A
に対して不貞行為に基づいて損害賠償請求を行うことが考えられます。
② 相手方妻Bは 不貞行為を行った 相手方夫A と 妻Y
に対して不貞行為に基づいて損害賠償請求を行うことが考えられます。
それぞれの夫婦が離婚をしている場合には、より資力がある方から回収を図れば救済を図ることができるため、それほど大きな問題はないことはありえます。
しかし、不貞行為に基づく損害賠償請求権は、共同不法行為によるため、それぞれは不真正連帯債務の関係に立ち、夫Xは、相手方夫Aのみに全額を請求することができます。
逆に相手方妻Bもまた、相手方夫Aに対する請求を行わず、妻Yに対してのみ全額を請求するといったことがあり得ます。
双方ともの家庭が家計を同じようにしていた場合には、
夫Xは、相手方夫Aに対して、200万円を回収し、相手方A・Bの共同の財産から200万円が支払われる
相手方妻Bは、妻Yに対して、200万円を回収し、X・Yの共同の財産から200万円が支払われる
といった場合には資金が循環しているのみとなってしまい、損害賠償請求をする意味があまりないといった事態はあります。
事案によっては、4者間でゼロ和解をすることで、相互に支払いをしないことで紛争を解決するといった事案も存在することはあります。
このような場合には、できるだけ充実した合意書を作成し、今後の面会をしないこと、接触を禁止することなど金銭以外の紛争解決のため条項を定めておくといたことが考えられるでしょう。
(2)離婚に至っていたのか、お金を持っているのかどうかについて金額で差が生じることがある。
損害とは、加害行為によって夫婦共同生活の平穏がどれほど害されたのかによって異なってくることとなります。
夫Xと妻Yとの夫婦関係が平穏であった一方で、相手方夫Aと相手方妻Bとの婚姻生活が長期間の別居、既に離婚の協議が進んでいた場合、家庭内暴力などにより既に破綻をしていたときなどは、発生させた結果に違いがあると認定されることはありえます。
また、夫Xと妻Yとが離婚に至った一方で、相手方夫Aと相手方妻Bとの婚姻生活は何ら変わりがないといった事態もあり得ます。
このような場合には、不貞行為に基づく損害賠償請求権について、より高い損害が発生していた側であるXから妻Yと相手方夫Aに対する損害賠償請求権が200万円などが認められる一方で、相手方妻Bから妻Yと相手方Aに対する損害賠償請求権が数十万円など低額に算定されることもあり得てしまいます。
したがって、離婚に至っていたのか損害の発生の程度によってダブル不倫の案件でも損害額の受け取りに差が生じてしまうことはあります。
また、法的部分ではないのですが、仕事をしていない、預貯金がないといった側に対しては損害賠償金を回収することが困難となることがあります。
そのため、夫Xから相手方Aに対する請求については、損害賠償請求にて債権回収ができる一方で、相手方妻Bから妻Yに対する請求については、仕事をしておらず、預貯金もないために、回収できるお金がなく、債権回収が困難といったことがあり得ます。
したがって、請求する際の資力がどこまで想定できるのかも考慮しておくことが必要となるでしょう。
(3)求償権を考慮した場合にはどうなるのか。
共同不法行為に基づく損害賠償請求権であると考えた場合には、求償・負担の割合については、それぞれの過失の度合いや損害発生の加担の程度などによって変わってくることとはなります。
もっとも、不貞行為において主導的役割は誰であるのかなどによって違いはあるものの、事情を考慮して割合を定めることが困難であると、平等であると判断されることもありえるかもしれません。
夫Xが相手方夫Aに対して300万円を請求し、300万円を受け取ったとしても、内部負担が対等であるとして、相手方Aは、妻Yに対して求償権に基づいて150万円を請求していくことがあり得ます。
同じように相手方妻Bが妻Yに対して300万円を請求し、300万円を受け取ったとしても、内部負担割合が対等であるとして、妻Bが、相手方Aに対して求償権に基づいて150万円を請求したような場合には、家計が同一であった場合には、慰謝料請求、求償権の行使により資金が循環したに過ぎないといったことはあり得ます。
したがって、慰謝料請求、求償権の行使を踏まえて、誰に対して、いつ請求をしていくのかを検討しておくことが大切となるでしょう。
まとめ
ダブル不倫では慰謝料をどちらに請求するのかについては、資力のある側、回収が見込まれる側から行うことが考えらます。
損害額については、別居や離婚に至った案件では、200~300万円などで請求するなど通常の慰謝料請求を行うこととはなりますが、ダブル不倫にて4社間での解決をするためにゼロ和解などとなる事案も存在します。
ダブル不倫の場合には、請求が循環してしまう、損害額が変わってしまうなど問題が生じるものの、どのような事態となるのかは事案によって大きく変わってくることとなります。
また、離婚や別居をして財産の流出が考えにくい場合には、正当な権利を実現するために請求をきちんとしておくことが大切なことがあり得ます。
浮気、不倫について慰謝料請求や離婚について悩まれている場合には弁護士に相談し、対応を行っていくことをオススメ致します。
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