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婚氏続称をした者が婚姻前への変更申立て・やむを得ない事由

婚氏続称をした者が婚姻前への変更申立てをする場合(戸籍法107条1項)

 

離婚をした場合に婚氏続称制度を利用し、離婚の際に称していた氏を称することができます。

 

では、婚氏の続称をした場合には、婚姻前の氏に戻すことはできなくなるのでしょうか。

 

このコラムでは、離婚後の婚氏続称制度と婚氏続称をした者が婚姻前への変更申立てをする場合(戸籍法107条1項)について、解説させていただきます。

婚氏続称制度とは何か

 

婚姻をした場合には、夫婦は、婚姻の際に定めるところにより、夫または妻の氏を称することとなります(民法750条)。

 

そして、夫婦同氏の原則は、婚姻による効果であるため、婚姻によって氏を改めた配偶者は、離婚におって、婚姻前の氏に復することが定められています(民法767条)。

 

なお、戸籍の筆頭者をはじめ全員が死亡した場合や新戸籍編製などの理由で戸籍から除かれた場合、婚姻により氏を改めた妻又は夫が離婚により新戸籍の編製の申出をした場合には、新しい戸籍が編製されることとなります(戸籍法19条1項)。

 

戸籍法19条
・婚姻又は養子縁組によって氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によって、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。
・但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。

しかし、婚姻期間中の氏によって、社会的活動や信用を築いていた者としては、婚姻中の氏を離婚後にも継続したいと望むことがあり、これを拒否することまでは求められていません。

 

そこで、離婚により復氏をした配偶者が、離婚の日から3か月以内に戸籍係に届け出ることによって、離婚の際に称していた氏(婚姻中の氏)を称することができる婚氏続称制度(民法767条2項)が設けられています。

 

【届出人】   離婚をした際に、婚姻前の氏に復した者
【届出の期日】 離婚の日から3か月以内
【届出】    届出を行うと本籍地、所在地の市区町村役場に届け出書を提出することとなります。

 

離婚届と同時に提出することができます。提出場所によっては戸籍謄本が必要となるため、あらから締め市町村に確認をしておくとよいでしょう。

 

書式については、役所などで取得するか、インターネット上に書式がダウンロードをすることがあり得ます。

再び前の婚姻前への変更を申し立てることができるのか。

 

では、婚氏続称制度をした場合には、氏の変更をすることはできるのでしょうか。

 

戸籍法107条 【やむを得ない事由】によって、氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないことが規定されています。

 

これは、婚姻前の氏を名乗る必要性が出てきた場合には、家庭裁判所の許可を得て、婚姻前の氏へ変更することができる制度を設けたものです。

 

ここでの氏を変更する「やむを得ない事由」がある場合とは、氏の変更を認める必要性のことをいい、続称した婚氏が主観的な理由では変更は認められず、変更を認めなければ社会生活上は困るような客観的な事情が必要とは考えれています。

 

もっとも、裁判例では、婚氏続称の届出をした場合であった者が、婚姻前の氏に変更する場所には、他の変更の場合に比べて緩やかな基準により判断がなされていると考えられています(大阪高決昭和52年12月21日)。

そして、裁判例の中では、

① 婚氏続称の届出後に、その氏が社会的に定着する前に申立てがあったかどうか。

② 申立ての内容が恣意的なものではないか

③ 第三者が不測の損害を被るなどの社会的弊害が発生するおそれがあるのかどうか

によって判断がなされるとされています。

 

もっとも、現在は、社会的に定着をしていたとしても、氏の変更を認める流れになってきているといわれており、①ではなく、②、③の内容が重視されることとなっています。

 

氏の変更許可の申立てについて

 

氏の変更許可の申立てについては、やむを得ない事情がある場合に、家庭裁判所の許可を得て行うことができます。

【申立人】

① 戸籍の筆頭者およびその配偶者

② 父又は母が外国人である者(15歳未満のときは、その法定代理人)

【申立先】

申立先の住所地の家庭裁判所

【申立てに必要な資料・費用】

① 収入印紙 800円分

② 各家庭裁判所で定める予納郵券

③ 申立人、戸籍謄本、氏の変更の理由を称する資料

離婚後11年経過後に、婚姻前の氏への変更が認めれた事例

 

大阪高裁平成3年9月4日決定の事例では、婚氏続称の期間が11年に及んでおり、社会的に定着しているようにみえる事案において、父母との同居において自分のみが別の名前であったことを説明しなければならない状況が煩わしく、また、郵便物が別人の家へ配達されるなどの事態が発生していたことを受けて、婚姻前の氏への変更を認める判断をしました。

 

その理由としては、戸籍法107条所定の氏の変更は、民法上の氏の変更をするものではなく、単に、名とともに個人を特定するための呼称上の氏を変更するにとどまるものであって、民法767条2項に基づく戸籍法77条の2の婚氏続称届をした場合も同様であって、離婚によって、民法上の氏は婚姻前の氏に復し、ただ、呼称上婚氏を続称することが許されるにすぎない。

 

すなわち、婚姻によって氏を変更した者が、離婚によって婚姻前の氏に復することは、離婚が行われたことを社会的にも明確にし、新たな身分関係の形成を公示しようとする制度の目的を支えるものであって、ただ、上記必要性を上回る婚氏続称の要求がある場合には、例外的にこれを認めることにしたものとみることができる。

 

このような見地からは、離婚をして婚氏の続称を選択した者が、その後、婚姻前の氏についての変更を求めた場合には、戸籍法107条所定の【やむを得ない事由】の存在については、これを一般の場合程厳格に解する必要はないというべきである。

日常生活上の不便、不自由を被っていることが認められるため、やむを得ない事由が認められると判断がなされました。

このような見解を踏まえると、婚氏続称の期間が相当程度あったとしても、氏の変更の申立ての内容が恣意的なものでない場合や第三者が不測の損害を被るなどの社会的弊害が発生するおそれが想定されない場合には、広くやむを得ない事由が認めれる余地があるということとなるでしょう。

離婚後に発生した様々な問題については、個人では対応をしにくいものはありますので、弁護士への依頼などをご検討されてもよいでしょう。

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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