不倫をした負い目から親権を諦めたけど…親権者は変更できる!? |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

不倫をした負い目から親権を諦めたけど…親権者は変更できる!?

面会交流の約束をしたのに,全然子どもに会わせてくれない。

子どもの面倒を全く見ずに遊び歩いているようだ。

『不倫をするような人は親権者失格だ』と当時の配偶者に言われ,不倫をした負い目もあって親権は譲ったが,やっぱり諦めきれない。

 

離婚をする際,未成年の子どもがいれば,必ず親権者を定めます。

しかし,離婚後に「やっぱり私の方が親権者にふさわしい!」という思いを抱く方は少なくないでしょう。

様々な事情があって親権を取り戻したいと思った時,どのような行動を取ればよいのでしょうか。そもそも,親権の変更は認められるのでしょうか。ここでは,親権の変更について具体的にお話しします。

 

1.離婚する際の「親権」

親権とは,子どもを監護・教育する権利・義務の総称です。両親の婚姻中は,共同親権という形で,父親と母親の双方が親権を持っている状態にあります。そのため,両親は互いに協力し,子どもを育てていかなければなりません。

しかし,離婚後まで共同親権の形を取ることは現実的ではありません。離婚した夫婦に,協力して子どもを監護するということは期待できず,共同親権の形では子どもの利益に反する結果となる可能性が高いからです。そのため,未成年の子どもがいる場合は,離婚に際して必ず父親か母親の一方を親権者と定めなければなりません。離婚届も,未成年の子どもがいる場合には,親権者の定めがなければ受理されないのです。

 

2.親権者は変更できる?

離婚に際して定めた親権ですが,その後いかなる事情があっても変更できないのでしょうか。結論から言うと,場合によっては変更することも可能です。

一切変更が認められなければ,劣悪な生活環境に置かれた子どもの利益を図ることができません。つまり,変更できなければかえって子どもの不利になるケースも存在する,ということです。

 

⑴親権を変更する方法

確かに,親権を変更して子どもの利益を図る必要が生じる場合も存在します。一方,簡単に親権の変更を認めてしまうと,子どもの置かれた立場が容易に変わり得るということになります。その分子どもの地位が不安定になり,子どもの生活に悪影響を及ぼしかねません。

子の親権者が,戸籍上に「親権者」という記載で明確にされていることからも明らかでしょう。

そのため,日本では親権者の変更は容易には認められず,親権者を変更するためには家庭裁判所での手続を経なければならないのです。

親権者を変更するためには,家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てます。調停はあくまで話し合いですから,父母の合意が成立し,裁判所も親権者の変更が妥当であると判断した場合にのみ,親権者の変更が認められます。

調停での話し合いがまとまらなければ,「審判」という手続きに移行し,裁判所が親権者変更の是非を判断することになります。

仮に,離婚協議書において親権者変更の条件を定めていたとしても,その条項は有効だとは言えません。

例えば,父母の合意のもと,離婚協議書に「大阪府外へ引っ越す場合は親権者を変更する」と定めても,この条項から直ちに親権者の変更が認められるということはありません。

このように,原則として親権者の変更を行うには,十分な手続きを経る必要があるのです。

 

⑵父母の同意のみで親権者を変更できる場合

一方,例外的に裁判所の手続きを経ず,父母の同意のみで親権者を変更できる場合が存在します。

離婚後に誕生した子の親権者を,その子を認知した父親に変更する場合です。離婚後に誕生した子に関しては,出生という事実により自動的に母が親権者と定められます。自動的に母と定まった親権者を父に変更するこの場合にのみ,家庭裁判所の手続きを経ることなく,親権者を変更できるのです。

 

3.親権者変更を認めるうえでの考慮要素

では,調停において親権者変更の是非を判断するうえで,どのような事情が考慮されるのでしょうか。考慮される事情は,「現在の親権者側の事情」「新たに親権者になろうとする側の事情」「子どもの事情」と,大きく3つに分けられるでしょう。

それぞれの事情について,具体的な考慮要素を見ていきます。

 

⑴現在の親権者側の事情

ここまでお話ししてきたように,親権者は子どもの利益を図るために定められるものです。そのため,現状を維持したのでは子供の利益を図れない,つまり,親権者が適切に親権を行使し,子どもの利益を図ることができていない,という事情が存在することが必要なのです。

現在の親権者が親権者としての働きをしていないと言えなければ,子どもにとって親権者を変更する利点は大きくありません。そこで,親権者の変更にあたっては,現在の親権者が「親権者としてふさわしくない」といえる事情があるかを検討します。

具体的にどのような事情があれば,「親権者としてふさわしくない」といえるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

 

①育児放棄・虐待

子どもの日常生活を支えることは,親権者にとって最も重要な役割です。子どもを放置して遊び歩いているとか,子どもに殴る・蹴るの暴行を加える,食事を与えない等の事情があれば,子どもの健全な発育は見込まれません。

このような状況を放置すれば子どもに深刻な悪影響を及ぼしますから,親権者を変更すべき重大な事情と言えるでしょう。

 

②重大な病

大病を患っていれば,子どもを監護することは困難かもしれません。また,鬱病等の精神疾患をもっている場合でも,精神状態が安定しない以上子どもの監護は困難であると判断されるかもしれません。

更に,薬物乱用により精神的に不安定な状況に陥っているという場合も,子どもの適切な監護を望めないと考えられるでしょう。

 

③死亡

親権者が死亡した場合でも,自動的に親権者が変更されるわけではありません。親権者が死亡した場合には,未成年後見人が選任されることになります。ですが,実の親が親権者となる方が子どもの利益に適う場合もあるでしょう。そのため,親権者の死亡も親権者変更を認める事情の1つと考えられます。

 

④刑務所への収監

親権者が刑務所に収監されてしまうと,子どもを監護・監督することは事実上不可能です。そのため,親権者の変更が認められる1つの事情となり得るでしょう。

 

⑤著しい監護状況の変化

子どもにとって監護状況や生活環境が大きく変化することは,多大な負担になることがあります。例えば,親権者が海外へ転勤する場合等です。国内での引越しとは異なり,海外であれば生活習慣から使用する言語まで,子を取り囲むあらゆる状況が大きく変化します。

このように,生活環境が大きく変化することで子どもに不利益が生じると考えられるという状況も,親権者変更が認められ得る1つの事情といえるでしょう。

 

⑵新たに親権者になろうとする側の事情

現在の親権者が親権者としてふさわしくないと言えたとしても,新たに親権を獲得しようとする親が親権者としてふさわしくなければ,子どもの利益は図れません。

そこで,新たに親権者になろうとする親が,「親権者として適切といえるか」も,親権者の変更を認めるうえでの重要な観点なのです。

具体的な考慮要素を見ていきましょう。

 

①監護環境が整っているか

例えば,現在の親権者が重大な病で親権者たるにふさわしくないと判断されたとしましょう。同時に,新たに親権者になろうとする者も同様に重大な病を抱えていれば,親権者を変更したとしても,従来と環境は変わりません。

そのため,新たに親権者になろうとする親に,親権者たるにふさわしくない事情がないか,子どもを監護するだけの環境を整えられているか,ということは重要な考慮要素なのです。

 

②住環境,協力者,経済力

親権者として子どもと生活を共にする以上,物理的にも子どもを育てるだけの環境を整えなければなりません。

具体的には,子どもが生活するに足りる住環境が整っているか,子どもを育てるだけの経済力があるか,いざという時に助けてくれる親族等が近くにいるか,等が考慮されるでしょう。

 

③子への愛情があるか

親権者となる以上,子どもへの愛情があることは必須です。愛情がなければ育児放棄や虐待等にも発展しかねません。そのため調停では,実際に子どもとの触れ合いの場を設ける等して,子どもと新たに親権者になろうとする者との関係性を調査することが多いでしょう。

 

⑶子ども側の事情

親権者は子どもの利益のために定められるものですから,子ども自身の意思も尊重されます。子どもが自らの主張を持てる年齢であれば,裁判所は積極的に子どもの意見を聞くことが多いようです。

 

4.有責配偶者にからの親権者変更調停の申立て

自分の不倫が原因で離婚をすることになり,子どもにも申し訳ないと思い親権を諦めた,という方は少なからずおられるでしょう。一度は親権を諦めたものの,やはり子どものことが心配で親権を取り返せないか,と悩んでいる方は少なくないはずです。

確かに,不倫等が離婚の原因なのであれば,夫婦関係の悪化の原因は有責配偶者側にあるでしょう。しかし,夫婦の問題と親子の問題は別個に考えられるべきものです。「夫婦関係悪化」の原因を作ったとしても,そのことが「親子関係の悪化」に直結するわけではないからです。

そのため,離婚に際して有責配偶者であった場合でも,親権者の変更は別の問題として考慮されます。有責配偶者であったからといって,親権者変更が認められないというわけではないのです。

ただし,既にお話ししてきたように,親権者の変更は子どもの利益のために考えられなければなりません。現在の生活環境と,新たな生活環境を考慮して,親権者を変更することが真に子どもの利益になるのか,を厳格に考慮します。

「やっぱり親権を取り返したい」「私の方が親にふさわしい」という理由だけでは,親権者の変更は認められないのです。

 

5.まとめ

以上のように,子どもの利益を図るため,親権者の変更には厳格に手続きが必要です。「やっぱり親権がほしい」等の安易な理由で変更が認められることはまずあり得ません。そのため,離婚の際には親権について十分に話し合い,検討することが必要です。

一方,現在置かれている環境が劣悪である等,親権者の変更が子供の利益となる場合には,変更が認められる可能性は十分にあります。

弁護士であれば,具体的な事情をお聞きしたうえで親権者変更に関するアドバイスを行うことが可能ですから,親権でお困りの方は,是非一度弁護士にご相談ください。

 

 

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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