プロポーズの後には浮気慰謝料を請求できる?【婚約中の不倫】
慰謝料を請求したいプロポーズの後には浮気慰謝料を請求できる?【婚約中の不倫】
プロポーズを行い、婚約をしたあとに、他の人物と肉体関係をもった場合には、浮気慰謝料を請求することはできるのでしょうか。
残念ながら、プロポーズをして、結婚式を挙げる予定に至っていたのに、浮気が発覚してしまったというケースも実際に存在しています。
法律上では、債務不履行または不法行為と呼べる行為があったのか、どのような損害が発生したのかといった点から分析をしていくことになりますが、結婚前ということであると婚約が成立しているのかどうかといって点で、請求には一定のハードルがあることも事実です。
そこで、婚約中に肉体関係をもつといった不倫をしていた事例などで慰謝料請求を行うことができるのかを解説させていただきます。
Contents
1 婚約とは何か
婚約とは、将来婚姻をするという約束をいいます。現代は、男女が結婚するまでには至る過程は様々ではありますが、交際を重ねていく過程の段階で、将来の結婚を約束して、現実に夫婦となるために、準備を進めていくといったことになることが多いでしょう。
大審院大正4年1月26日判決では、婚姻の予約は、将来に於いて適法なる婚姻をなすべきことを目的とする契約にして、その契約は適用にして有効であるといった判断を行っており、当事者が意思能力を有し、将来婚姻をなすべき確実な合意があること、目的となっている婚姻が適法で正当である場合には成立すると考えられています。
また、婚約は、合意だけで成立し、客観的に結納などの社会的儀礼がなくても有効に成立すると考えられています(最高裁昭和38年12月20日判決)。
実際の案件では、将来婚約するという約束が成立しているのかどうかを判断するために、明確・真摯な婚約の意思表示がなされていたのかが問題となることがあります。
明確・真摯な婚約の意思表示がなされていたのかについては外形的な事情から判断を行うことになりますので、
①婚約指輪の交付がなされている、
②結納金の納付が行われている、
③共同生活が行われている、
④結婚式などの準備がなされている、
⑤家族への挨拶が行われている、
⑥結婚式などの招待状を送付する
など客観的な結婚に向けての事情が必要となります。
したがって、当事者で明確・真摯な婚姻の意思表示を立証できる程度に外形的証拠が揃っていることが必要となるでしょう。
最高裁昭和38年9月5日判決によれば、婚約を行っていたにもかかわらず、正当な理由なく(不当に)破棄した者は、債務不履行などに基づき相手方がこれによって被った損害を賠償しなければならないこととなります。損害賠償の範囲としては、精神的損害以外に、財産的損害として、家具衣類の購入費用、退職により得べかりし利益の喪失、仲人への謝礼金などが含まれています。
なお、婚姻が有効に成立していると家庭裁判所に婚姻を求める調停を行ったとしても、意に反して婚姻をさせることまではできず、あくまで損害賠償で処理をすることとなるでしょう。
正当な理由が認められる事例としては、
① 相手方が挙式の直前で無断で家出をして行方をくらませた場合 (大阪地裁昭和41年1月18日判決)
② 相手方が他人と事実上の婚姻をした場合(最判昭和38年9月5日判決)
③ 相手方に虐待、暴行侮辱などの行為があった場合 (東京高判昭48年4月26日判決)
④ 一方的に予定の挙式日を延期し、新たな挙式日を申し入れた場合 (奈良地裁昭和29年4月13日)
⑤ そのほか相手方が直ちに婚姻生活に入ることができない程度の疾患がある場合や相手方の経済事情が日常生活を極度に困難ならしめるほどに悪化した場合
などがあるとされています。性格の不一致などが理由の場合には、正当な理由とは認められない可能性が高いでしょう。
2 プロポーズは婚約に当たるのか
プロポーズは、正式に結婚をしようという意思表示であった場合には、婚約が成立していることを基礎付ける事情といえるようにも思えます。婚約が特に様式を要しない行為であり、当事者に婚姻をしようとする明確・真摯な意思表示があった場合には、婚約に当たるといえる場合はありえるでしょう。
一方で、将来は一緒になろうと言っていた程度などプロポーズであるかどうかの判断自体が難しい場合はあります。いった、いわないといった事情や通常の会話、LINEのメッセージで送られていたときに直ちに婚約まで認めてしまうのかといわれると判断がわかれる場合があり得るでしょう。
そのため、プロポーズのみならず、他の客観的事情・証拠によって、将来、真実夫婦として共同生活を営む確定的な合意が成立していたといえるまでに至っているかどうかを判断していくことが必要となります。
3 婚姻時に不倫をした場合の慰謝料
(1)婚約が成立しているか
上記のとおり、不倫といえるかどうかの前に【婚約】が成立しているのかどうかがまず問題とはなってきます。
将来、真実夫婦として共同生活を営む確定的合意があったのかどうかを客観的な証拠として立証できるのかを検討していくことになるでしょう。
(2)不貞行為・不法行為があるか、婚約破棄に至っているか
婚約が成立している場合には、不貞行為などの成立しているのかを検討していくこととなります。
不貞行為とは、配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。
婚約者を行った者が、婚約者以外の者と性的関係、肉体関係をもつ行為は、婚約の成立よって成立した法律上保護に値する権利・利益を侵害している場合があるといえるでしょう。
婚約を不貞行為によって破棄至ったとすれば、不当な婚約破棄を生じた原因を作り出した者として、不倫を行った婚約者に対して、慰謝料請求を観念できることがあるでしょう。
不貞行為についても、証拠により立証が必要となってきます。単に手をつないでいた、秘密に会っていただけといった場合には直ちに不貞行為とはいえない場合もあるため、弁護士と相談し、立証が可能な程度に至っているのかを検討していくとよいでしょう。
(3)請求の相手方に故意、過失があるか
不法行為に基づく損害賠償請求の場合には、当該行為を行うことについて故意、過失が存在することが必要となります。婚姻後の不貞行為の場合には、婚姻関係が存在することを認識していたのかどうかが問題となってくるため、婚約といった場面においても婚約として法的に保護される状態にあると認識していたのかが問題となることがあり得るでしょう。
婚約者については、不貞行為を行う時点で、婚約をしている事実を認識しているため、それほど問題とならないかもしれませんが不倫相手など第三者に対しては、婚約関係にあることを故意、過失がなければならないと考えられます。客観的な事情から、婚姻関係にあることを知ることができたかを検討していくことになるでしょう。
4 まとめ
婚約前に不貞行為があった場合には、婚約という状態が成立しているのか、婚約の不当破棄を言える状態といえるのか、不倫相手に対して不法行為に基づく損害賠償請求ができるのかなど法的に検討をしていくべきことがあります。
一方で、精神面でのケアが必要なケースも多くあります。結婚という人生での大きな変わり目において婚約者との信頼関係が損なわれる事態が生じてしまったために受けているストレスは相当大きなものとなります。結婚前に子どもが生まれている場合など、今後は子どものことをどのようにしていかなければならないことがあります。
法的な専門家のみならず、メンタル面での専門家にも相談をしながら、ご自身が何を求めているのか、その手段としていかなる法的手段を講じるとることが適切なのかを検討していくとよいでしょう。
慰謝料請求を行いたいといった方はぜひ一度弁護士にご相談ください。
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