浮気・不貞行為慰謝料の消滅時効とは? |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

浮気・不貞行為慰謝料の消滅時効とは?

慰謝料の時効期間

浮気・不貞行為が判明した場合に、慰謝料請求が迅速に行うことができず、時効になってしまうことがあります。

 

これらの行為があったとしても配偶者の方と話し合い、今回は水に流そうと考えて行動をしないことはありえます。

 

また、配偶者との離婚手続きを先に進めようと思って、浮気相手への慰謝料請求を後回しにしてしまうことがあるでしょう。

 

これは、一般には、離婚に至ったとの事情、婚姻関係が破綻に至ったとの事情が不貞行為慰謝料の増額理由となっていることも関係しているかもしれません。

 

ここで、離婚について早期に話し合いで解決ができるのであれば、このような戦略を取ることは間違ってはおらず、夫婦関係の問題を解決したあとに不貞慰謝料請求をするという方法でもかまわないでしょう。

 

しかし、司法統計によれば、もし離婚裁判となってしまった場合に半年から2年以内に終わることが多く、解決までに1年程度がかかってしまうおそれがあります。

 

実際のこれまでの経験上も、離婚紛争については1年~2年は解決まで覚悟したおいたほうがよいという話をさせていただくことがあります。

 

というのも、離婚原因として不貞(民法770条1項1号)があったとしても、離婚をまとめるためには、親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、面会交流など検討しなければならない項目が多岐にわたります。

 

離婚に至る夫婦関係では、どちらかだけが一方的に不満を覚えている、証拠で立証できるというわけではなく、お互いの主張の応酬や感情的な面で決着がつかない、親権や面会交流などは家庭裁判所調査官の慎重な調査も合わさって、思っている以上に時間がかかるのが実情です。

 

そこで、不貞行為に基づく慰謝料請求を浮気相手に対してもきちんと行えるようにするために、浮気・不貞行為慰謝料についての時効についてこの記事では解説させていただきます。

 

 

質問

Q 不貞行為について時効で請求できないことはあるのですか。


 

弁護士の回答

残念ながら、浮気・不貞行為についても時効制度は存在します。

不貞行為があったとこ、不倫の相手方が誰であるかを知ったときから、3年以内に請求をしないと時効により損害賠償請求をすることができない場合があります(民法724条1号)

一方で、不倫の相手方を十分にしらない場合には、時効の起算点といえないことがあります。

もっとも、不法行為のときから20年経過をすると請求することができなくなります(民法724条2号)

不貞慰謝料を請求したいと悩んでいる場合には、できるだけ早期に弁護士と相談をしていくことが大切となるでしょう。


1 時効期間とは

 

(1)3年と20年について

 

まず、慰謝料請求の根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求権となります(民法709条)

 

これは、故意または過失により法律上の権利又は法律上保護される利益を侵害した者に対して損害賠償責任を負わせるものです。

 

民法724条では、不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅することが規定されています。

 

1号 被害者又は法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行為しないとき

2号 不法行為の時から20年間行使しないとき

 

不倫の事実 および不倫の相手を知ったときから 3年
不貞行為の時から 20年

 

(2)加害者を知ったときとはいつか。

 

加害者と知ったときとは、加害者に対する損害賠償が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知ったことを意味すると考えられています(最高裁昭和48年11月16日判決)。

 

この事案では、被害者が不法行為の当時に加害者の住所や氏名を正確には知らず、しかも当時の状況としてその者に対する損害賠償請求権を行使することが事実上は不可能であるとして、状況がやんでいること、被害者が住所や氏名を確認した時に加害者を知ったときができるとされます。

 

天災や戦争などで損害賠償を請求することができない状況でない場合には、離婚紛争が生じていることは客観的にみて損害賠償請求をすることが事実上不可能であるとは評価されないため、被害者が不貞行為の相手方の住所や氏名を確認したときが加害者をしったときと考えられるでしょう。

 

東京地方裁判所平成24年6月19日判決においても、724条にいう加害者を知った時とは、加害者に対する損害賠償請求権が事実上可能な程度の状況のもとに、その可能な程度にこれを知ったときを意味するのが相当であること(最高裁平成14年1月29日判決)を引用しつつ、原告において加害者の住所、氏名を知った時点であることを前提に判断がなされました。

 

① 例えば、探偵事務所の調査報告書により、不貞行為の事実と、不倫相手の氏名、住所が判明した場合には、その時点が時効の起算点となり得るでしょう。

 

② 一方で、不倫の事実を知ったものの、配偶者が不倫相手の氏名、住所をかたくなに教えない場合には、携帯電話の特定と弁護士会照会によって請求可能な程度に相手方を特定できた時点が時効の起算点となりえるでしょう。

 

③ 戸籍謄本を取り寄せたときにはじめて不倫相手との間に子どもがいることが判明した場合には、戸籍謄本の取り寄せ時が不貞行為に基づく損害賠償請求権の時効の起算点となるでしょう。

 

具体的な事案ごとに問題となるため、弁護士と相談して対応を検討するとよいでしょう。

 

(3)損害を知ったときとはいつか

 

損害を知ったときとは、被害者が損害の発生を現実に認識した時を意味すると解されています(最高裁昭和46年7月23日判決)。

 

これは、被害者が損害の発生を現実に認識していない場合には、被害者が加害者に対して損害賠償請求に及ぶことを現実に認識できない場合には、損害賠償に及ぶことが期待できないためです。

 

不貞行為の発生を現実に認識している場合をいい、慰謝料の金額や程度までを知っている必要はないことになります。

 

不倫相手に対する損害賠償請求権は、不貞行為の時点と考えることが多いでしょう。

 

離婚に至っていた場合には、離婚に至ったことを損害賠償の起算点とできるようにも思えますが、最高裁平成31年2月19日判決では、離婚に伴う慰謝料の請求が認められるには、不倫相手が単に夫婦の一方と不貞行為を行うにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をする等として当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られてるとの判断をしています。

 

したがって、離婚に至っていた場合であっても、特段の事情がない限りは、個々の不貞行為の時点を時効の起算点と考えることになるでしょう。

 

離婚に至っていない事案において、原則として、不貞行為の時点と時効の起算点としていると考えあれるでしょう(最高裁平成6年1月20日判決参照)。

 

いずれにしろ、損害の発生として、客観的に不貞行為と言える自体といつの時点において把握することができたのかが大切な要素となります。

 

なお、法定代理人とは、代理権が、本人の意思とは無関係に法律の規定によって与えられている代理人のことをいい、未成年者の親権を行使する父母や被成年後見人の後見人などをいいます。このような案件では、あまり法定代理人が本人より先にしっていたとのことは想定されないため、そこまで気にされることはないでしょう。

 

2 時効制度はなぜ存在しているのか

 

なぜ不倫の慰謝料のような不法行為に基づく損害賠償請求権に時効制度が存在するのかを疑問に思われるかもしれません。

 

これは、法制度一般にいえることではあるのですが、裁判所が事実を認定するためには、証拠により立証や反証をしていかなければありません。

 

そうすると、一定の時間が経過した場合には、証拠が散逸してしまい、当事者に具体的な立証、反証をすることを求めることが難しくなります。

 

そこで、一定の期間の経過をもって、権利の行使をすることができないところで線引きをすることにあります。

 

また、権利の発生を認識しながら、長期間にわたり権利の行使をしなかったとの事情から権利の上に眠る者は保護しないとの考え方が取られています。

 

最高裁昭和49年12月17日判決では、民法724条で短期消滅時効を設けた趣旨について、不法行為に基づく法律関係が、通常、未知の当事者間に、予期しない偶然の事故に基づいて発生するものであるため、加害者は、損害賠償の請求をうけるかどうか、いかなる範囲まで損害賠償を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場に置かれるので、被害者において損害および加害者を知りながら相当の期間内に権利行使に出ないときには、損害賠償権が時効にかかるものとして加害者を保護するとの考え方が示されています。

 

したがって、不貞行為に基づく慰謝料請求の性質が不法行為によるものである以上は、損害および加害者を知ったときには、早期の権利行為が必要とされることになるでしょう。

 

3 配偶者と不貞相手で時効が異なる場合がある。

 

(1)不倫相手について

 

このような不倫に基づく慰謝料請求権は、共同不法行為としてふたりで行った不法行為となります。

 

もっとも、損害および加害者を知ったときについては、認識する時期が一人一人違うといったことがあり得るでしょう。

 

そのため、それぞれに対して慰謝料請求権の発生時期が異なることがあります。

 

不貞相手の場合には、不貞行為の時点、不貞相手の住所、氏名が判明したときと考えられます。

 

そのため、不貞行為のみがわかっているが不倫相手の住所・氏名が判明していないときには、時効が始まっていないといったことがありえるでしょう。

 

(2)配偶者について

 

配偶者の不貞行為が判明した場合には、損害の発生を知っていれば、通常は住所、氏名が判明していることがほとんどです。

 

もっとも、民法159条によれば、(夫婦間の権利の時効の完成猶予) 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しないとの規定があるため、3年が経過していたとしても、離婚しない限りは不貞行為の消滅時効は進行せず、離婚時に不貞行為に基づく慰謝料請求として行使をすることが考えれます。

 

また、離婚自体に基づく慰謝料として、離婚慰謝料請求を配偶者に対しては検討することができます。

 

離婚自体において、有責性を主張し慰謝料を請求できる場合があります。

 

離婚自体の慰謝料の場合には、不貞行為のみならず、双方、有責性が考慮されるため、同居扶助義務、協力義務、悪意の遺棄、家庭内暴力、モラルハラスメントなど様々な事情が考慮されることになるでしょう。

 

離婚自体の慰謝料請求は離婚時に発生するため、離婚後3年間の請求が可能とはなります。

 

したがって、配偶者に対する慰謝料請求は離婚請求と共に行われることが多いでしょう。

 

4 慰謝料について更新・完成の猶予とは

 

なお、時効については、時効の更新などによって、リセットされるといった場合があります。

 

時効の更新には3つの更新事由があります。

 

① 裁判上の請求や支払督促が行われた場合には、時効の更新がなされます。

確定判決と同一の効力を有するものによって権利確定がされた場合には、新たにその進行を開始することとなります(民法147条2項)

 

② 強制執行、担保権の実行、財産開示が行われた場合場合には、時効の更新がなされます(民法148条)

 

③ 債務者の承認による時効の更新(民法152条)

 

問題となることとしては債務承認を行っているのかどうかとなるでしょう。

 

いますぐに慰謝料を支払えないとしても、支払いをする旨の約束を合意書で定めておくことで、時効の更新をすることがありえます。

 

なお、裁判までに時効の完成を猶予するために、催告を行い、6か月以内、裁判を提起することで、時効の完成を猶予することが考えられます(民法150条)。

 

慰謝料を請求したいと考える場合には、できるだけ早期に不貞行為の相手方に対して内容証明郵便などで催告し、示談交渉を行い、協議による解決が難しい場合には、裁判所での訴訟手続きを進めていくといったことが大切となるでしょう。

 

5 まとめ

 

浮気・不貞行為が判明した場合に、慰謝料請求が迅速に行うことができないと時効により消滅をしてしまう危険性があります。

 

不貞行為の証拠の確認、請求の準備などをしていると期限のぎりぎりになって手続きを行うことにはリスクがありますので、できるだけ早期に弁護士に依頼して手続きを進めておくことが大切となるでしょう。

 

天王寺総合法律事務所では、不倫慰謝料事件について多数の案件を取り扱った弁護士が所属しておりますので、不倫慰謝料問題でお困り方はぜひお気軽にお問合せください。

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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