配偶者の不貞が発覚!慰謝料請求したいけど探偵はつけるべき? |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

配偶者の不貞が発覚!慰謝料請求したいけど探偵はつけるべき?

夫の携帯に知らない女性からのメッセージが…

配偶者が浮気をしているようだけど確信が持てない,証拠がない…

配偶者の様子が普段と違う,なぜか急に携帯電話をトイレやお風呂にまで持って行くようになった等,配偶者の不貞を疑うきっかけは様々です。

不貞行為を問い詰めたくても,手元に証拠がなければ確信が持てず,「確実な証拠を入手しよう」という考えに至る方は多いはずです。そして,思い付きやすい証拠の1つに「探偵の調査報告書」があげられます。実際にホテルに出入りしている写真等があれば,かなり強力な証拠と言えるかもしれません。

しかし,探偵に依頼するにはもちろんお金がかかります。確実に証拠を押さえられる日程が分からず何日も調査を続けると,それだけ時間も費用もかかってしまいます。慰謝料を請求するため,探偵の調査は不可欠なのでしょうか。ここでは,慰謝料請求における証拠の価値と,探偵をつけた場合のメリット・デメリットについてお話しします。

 

 

1.慰謝料の請求に「証拠」は必要?

⑴相手が不貞を認めなかったら…

配偶者の不貞相手に慰謝料を請求した際,相手方不貞の事実を認めないのであれば,任意に慰謝料が支払われることはないでしょう。この場合,訴訟を提起して,裁判所に不貞行為の有無と適切な慰謝料額を認定してもらうことになります。

裁判になった場合は,慰謝料請求の前提として,「不貞行為があった」と裁判所に認定してもらわなければなりません。そして,「不貞行為があったこと」を証明しなければいけないのは訴えを提起する側,つまり,慰謝料を請求する側です。裁判所は,証拠に基づいて事実があったかどうかを判断します。そのため,裁判上で慰謝料を請求するのであれば,証拠に基づいて「不貞行為があったこと」を証明しなければならないのです。

相手が不貞を認めていない場合,慰謝料を請求する側は,「不貞行為があった」という証拠を裁判所に提出して,この事実を認めてもらわなければなりません。ですから,「証拠」の存在は重要だと言えるでしょう。

⑵相手が不貞を認めていたら証拠は不要?

では,相手が不貞の事実を認めていたら証拠は不要なのでしょうか。

確かに,相手が不貞行為を認めて慰謝料を支払うというのであれば,結果として証拠が不要になる場合はあるかもしれません。しかし,相手が不貞の事実を認めていても,慰謝料の額で折り合いがつかなかった場合は裁判所に適切な慰謝料額を認定してもらうため,訴訟を提起することになります。

以前相手方が不貞を認めていたからといって安心はできません。訴訟になって,「不貞の事実はない」と否定してくる可能性もあります。そうなってしまったとき,証拠がなければ大変です。この時点で慌てて証拠を集めようとしても,あなたの配偶者や相手方が手元にある不貞を疑わせるような証拠を破棄してしまっているかもしれません。相手方が不貞の事実を認めているからと安心して何も証拠を集めていなければ,いざ訴訟になった際に困ることにもなりかねません。

仮に相手が不貞を認める可能性があっても事前の証拠集めは必須です。また,相手が不貞を認めた時点で,直筆で不貞行為を認める念書を作成してもらうのも1つの証拠集めの方法です。

 

2.「確実」な証拠とは?

ここまでお話ししてきたように,慰謝料の請求をするのであれば証拠の収集はかなり重症です。ですが,一体何が証拠になるのか分からないというお悩みをお持ちの方も多いはずです。

むやみやたらに証拠を集めようとして相手に勘付かれてしまっては元も子もありませんし,やっとの思いで集めた証拠が意味のないものだったなんてことになったら目も当てられません。どうせなら,確実な証拠を集めたいと思うものです。

とはいえ,「これがあれば確実」と言い切ることができる証拠を挙げることは困難です。ですが,不貞行為の存在が直接明らかになる証拠ほど「有力」な証拠と言えるでしょう。

たとえば…

ホテル内部で撮影された写真や動画等は,ホテル内で不貞行為が行われていたことを直接明らかにできますから,有力な証拠と言えます。また,ラブホテルに二人で出入りしていることが分かる証拠も有力な証拠と言えるでしょう。

他にも,相手が不貞の事実を認めていることが分かる証拠があれば,慰謝料を請求する相手自身が請求の根拠を認めているわけですから,有力な証拠になります。具体的には,不貞を認めて謝罪する念書等に相手がサインをしている場合等です。

 

3.探偵の調査報告書は有力な証拠?

⑴探偵はどんな調査をしてくれる?

まず,本当に配偶者が不貞行為を行っているかについて調査が必要です。配偶者が異性と2人で宿泊を伴う旅行に出かけていたり,ラブホテルに出入りしていた場合は,不貞行為の存在が強く疑われるでしょう。探偵の調査報告書では,2人で旅館に宿泊している様子(チェックイン・チェックアウトの様子)や,ラブホテルに入る様子等が明らかになることが多いです。

更に,不貞行為が明らかになっても,不貞相手がどこの誰であるか分からないというケースもあります。この場合には,探偵に依頼すれば不貞相手の素性まで明らかになることもあるでしょう。

⑵「有力な証拠」と言える報告書

先ほどもお話ししたように,不貞行為の存在が直接明らかになるような証拠ほど,有力な証拠と考えられます。そのため,2人で旅行に行った,不貞相手の家に出入りしているというだけでは強い証拠とは言えないかもしれません。「2人で出かけただけ」「旅館に泊まったけど2人きりではなかった」「貸していた物を受け取りに家まで行っただけ」等と言い訳をされてしまうかもしれないのです。

そのため,探偵の調査報告書では,「2人で」旅館やホテルにチェックインをするところから,「2人で」チェックアウトするところまでを追っていることが少なくありません。また,不貞相手の家に入るところから,出てくるところまで張り込んでいたなんてこともあり得ます。このように,「2人きり」でホテルや旅館に宿泊している証拠があれば,かなり有力な証拠と言えるでしょう。

一方,不貞相手と思われる人物の自宅に宿泊していても,その家には他の家族も同居しているような場合等は,一人暮らしの家に宿泊した場合より証拠としての価値は下がるかもしれません。

 

4.探偵の調査費用について

これまでお話ししてきたように,不貞の事実を明らかにできるという意味で探偵の調査報告書は証拠として重宝されるのは事実です。一方で,探偵に依頼するとなるとどうしても費用がかかってしまいます。「この日にホテルに行く」と分かっていればその日に限定して探偵をつければいいのですが,いつホテルに行くか分からない場合,調査に何日もかかってしまい,その分費用がかさむ可能性もあります。

かかってしまった探偵費用を慰謝料に上乗せして不貞相手に請求できればいいのですが,裁判になった場合そうはいかないのが現実です。

裁判に至らず相手との交渉で慰謝料の支払いについて合意する場合であれば,探偵費用も考慮して慰謝料の総額を算出すれば良いでしょう。もっとも,相手方が金額に納得しなければ,合意に至ることはできませんから,結局裁判所の判断を仰ぐことになります。

そこで,裁判所は探偵の調査費用についてどのように考えているのか,具体的に見ていきましょう。

 

以下で詳しく説明しますが,ポイントは次の3点です。

①不貞行為の存在を相手が否定しているのか

②「探偵の調査」以外で不貞の証明ができたか

③「探偵の調査」はどの程度必要性が高かったか

 

⑴裁判上認められる「損害」とは

裁判上で慰謝料を請求する場合,「不貞行為によって損害を被ったから,その損害を金銭で賠償してほしい」という訴えを起こしていることになります。慰謝料は,厳密には「不貞行為で被った損害」を補填する性質のものなのです。

そして,「損害」として認められるのは,不貞行為との間に因果関係のある損害のみです。厳密には,「相当因果関係のある損害」だけが相手が賠償すべき損害として認められるのです。

そのため,探偵の調査費用の支出についても,不貞行為との間に相当因果関係が存在する支出だったのかという観点から,相手方に賠償させるべきか否かを判断することになります。

⑵探偵の調査費用は「損害」?

そもそも,探偵の調査費用を支出すること自体が「損害」と言えるかについては,不貞行為の証明が必要だったかどうか,という観点から検討できます。

既にお話ししたように,相手方が不貞の事実を否定した場合,不貞行為の存在を証明しなければいけないのは慰謝料を請求する側です。つまり,相手が不貞を否定しているような場合には,こちらが不貞の証拠を提出しなければなりません。そのため,他に有力な証拠がなければ,証拠を獲得するため探偵に依頼することも「損害」と言えるでしょう。

過去の裁判例でも,不貞行為の存否が争われている事例では,探偵の調査費用が「損害」として認められています(東京地裁平成23年12月28日判決)。一方,不貞行為の存在について争いがなかった事例では,裁判所は探偵の調査費用を「損害」とは認定しませんでした(東京地裁平成27年12月2日判決)。

また,不貞行為が争われている事例でも,他の証拠から十分証明ができたと考えられる場合にも,探偵の調査費用は「損害」と認定されていません(東京地裁平成22年12月21日判決)。

⑶支出した全額が「損害」?

次に,調査費用が「損害」に該当するとして,支出した全額が「損害」と言えるのでしょうか。これについて裁判例は,「相当因果関係が認められる額」のみが損害に該当すると判断しています。

先ほどの東京地裁平成23年12月28日判決でも,「通常必要とされる調査費用」の限度で相当因果関係を認めると判示しています。

また,他の証拠から一応不貞行為の存在を推知できるとしながらも,不貞の事実を明らかにするためには探偵の調査も必要であったと認めた事例(東京地裁平成15年11月6日判決)では,探偵の調査は立証方法の1つにすぎなかったとして,原告が支出した調査費用190万円のうち,10万円のみを相当因果関係の認められる損害と認定しています。

⑷探偵の調査費用が個別の「損害」といえなくても…

東京地裁平成27年12月2日判決では,探偵の調査費用を相当因果関係の認められる「損害」とは認定しませんでしたが,探偵の調査費用を支出したことは,慰謝料算定の基礎となる1つの事情として斟酌するべきであると述べています。

つまり,金額で算定される「損害」として認定されない場合でも,慰謝料額を算定する判断要素として考慮される余地はある,ということです。

⑸小括

このように,探偵の調査費用が裁判上全て「損害」と認定されるわけではありません。裁判例からは,以下のようなまとめ方ができるでしょう。

①そもそも不貞行為の存否が争われているのか

争われていなければ不貞行為があったことの証明は不要なので,探偵をつける必要はなかったと判断されます(東京地裁平成27年12月2日判決)。

②不貞の証拠として,「探偵の調査」が必要だったか

探偵に依頼せずとも他の証拠から証明が十分である場合も,探偵をつける必要はなかったと判断されています(東京地裁平成22年12月21日判決)。

③「探偵の調査」の必要性は高かったか

探偵に依頼する必要性に応じて,調査費用のうち「損害」と認定される範囲は変わるようです。「探偵に依頼しなければ不貞は明らかにならなかった」と言えるのか,「他の証拠から一応は推認できた」という程度なのかによって,裁判所の認定額にも幅があります。

 

5.まとめ

以上お話ししてきたように,探偵の調査は証拠として有用でしょう。しかし,裁判になった時に不貞行為の存否が争われなければ,探偵を付けても費用が回収できないというリスクもあります。一方,そのリスクを回避するために証拠がないまま探偵をつけずに慰謝料を請求したが,相手が不貞行為の存在を否認してしまった,という可能性もあり得ます。この時点で証拠を収集することは難しいでしょうから,「あの時探偵をつけておけば…」と後悔することもあるかもしれません。

そもそも慰謝料を取ればければ元も子もありませんから,証拠がないのであれば探偵をつけるのも1つの手段ではあるでしょう。ただし,費用の回収は難しいということは念頭に置かなければなりません。

探偵をつけて調査をするべきか,今の証拠で十分か,どの程度費用の回収見込みがあるか,お悩みの際は,是非ご相談ください。

 

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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