不倫慰謝料で配偶者の支払を免除したとき、浮気相手にも請求できなくなるのか。 |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

不倫慰謝料で配偶者の支払を免除したとき、浮気相手にも請求できなくなるのか。

 

浮気、不倫の慰謝料請求において、配偶者に対しては婚姻関係を続けるとして妻や夫に対する慰謝料請求は免除をするといったことがあります。

この場合には、浮気相手に対して慰謝料請求をすることに問題はないのでしょうか。

不貞行為に基づく損害賠償請求権は、共同不法行為であるのに、片方だけに請求した場合の法的問題について解説をさせていただきます。

共同不法行為とは何か。

(1)共同不法行為とは

 

共同不法行為とは、複数人によって共同でなされた不法行為のことをいいます。

典型例としては、数人が1人に対して共謀をした上で詐欺行為を行うなどの場合には、共同不法行為が成立することがあります。

民法719条1項には、数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うとの規定が置かれています。

判例によれば、不貞行為は、配偶者と浮気相手との共同不法行為であると解されています。

(2)不真正連帯債務とは何か。

 

では、連帯についてはどのように考えられているのでしょうか。

もし、共同不法行為に基づく損害賠償請求権が連帯債務として債務免除の効果が共同不法行為者に及ぶとすると、不法行為を行った配偶者に対して損害賠償請求権を免除するとの意思表示は、他方の浮気相手にも及んでしまうようにも思えます。

しかし、最高裁昭和48年2月16日判決、最高裁判例57年3月4日などによれば、共同不法行為による損害賠償債務は、不真正連帯債務であり、連帯債務に関する民法437条(免除の絶対的効力)は適用されないとの判断がなされています。

不真正連帯債務とは、

① 数人の債務者が同一の給付義務を負っている一方で、債務者のうち一人が弁済すれば他の者も債務を免れるという点では、通常の連帯債務と同様の性質を有する。

一方で、通常の連帯債務が債務者間の主観的な共同関係が弱いものであるとして、

② 弁済その他債務者に与える事由のほかは相対的効力にとどまるため、一人に生じた事実由が他の債務者に効力を及ぼさないもの(例えば、債務者の一人への支払わなくてよいよという免除の効力は他の債権者には及ばないものということとなります。)

という性質を有しております。

たとえば、最判平成6年11月24日判決によれば、離婚調停のときに、条項に定めるもののほか名目の如何を問わず互いに金銭の一切の請求をしないという条項についてを共同不法行為による損害賠償債務について夫の負担部分を免除する異議を有し、浮気相手のためにも効力を生じて慰謝料を300万円→150万円となるのではないかと減額をした事案において、判例・通説の立場から、免除には絶対的効力はないとして、浮気相手に対する慰謝料全額を請求する意図があるとの判断をした事案があります。

したがって、基本的には、配偶者に対する免除の意思表示から浮気相手に対する免除の効力は生じないと考えられるでしょう。

求償権について

 

求償権とは、一定の法律上の理由に基づいて、特定の者に対して事故の財産が減少した分の返還を請求することができる権利のことをいいます。

 

典型的には、主たる債務者と保証人との関係で、保証人が債務を弁済することで、主たる債務者が支払いを免れた場合には、保証人から主たる債務者に対して、弁済額の返還を求めることができる権利などが想定ができるでしょう。

 

本来の不真正連帯債務には、債務者間に主観的な共同関係がなく、たまたま別個の原因で債務が偶然に競合したに過ぎないため、債務者間に負担部分がなく、内部関係において求償権は生じないと考えることが原則です。

 

そのため共同不法行為に基づく損害賠償請求権については、求償権が認められないようにも思えますが、判例は、共同行為者の内部的負担部分は、各自の過失割合によって決めるとの理解を前提として、この過失割合で確定された自己の内部的負担額を超えて被害者に弁済をした共同行為者の1人は、他の共同行為者に対して求償権を行使することができると判断がなされています(最判昭和41年11月18日、最判昭和63年7月1日、最判平成3年10月25日)。

 

したがって、不貞行為に基づく損害賠償請求権は共同不法行為であるとして、浮気相手が債務の全額を支払った場合には、配偶者に対して求償権に基づいて、自己の負担割合を超えた部分の支払いを求めることができることとなるでしょう。

 

 不貞行為に基づく慰謝料請求でおいて問題となること

 

不貞行為が共同不法行為にあたり不真正連帯債務であるとの性質から以下の点に注意をしていくことがありえます。

① 配偶者などに対して免除をするとの意思表示は浮気相手に対しては相対的にした効力がないために、浮気相手に対して損害賠償請求をすることは可能となります。

② 債務者の1人である者が全額を支払った場合には他の債務者も弁済を免れるため、配偶者が不貞行為に基づく損害賠償請求権の全額を支払った場合には、もはら債務がないとして浮気相手に対する請求が困難となります。

③ 配偶者が不貞行為に基づく損害賠償請求権の全額を支払った場合においては、配偶者としては自己の内部負担額を超えて被害者に弁済していると認められる場合には、過失の程度のおいて求償権を有することとなります。

④ 同じように、配偶者に対して慰謝料請求を免除したとしても、浮気相手に対して慰謝料請求の全額を求めた場合には、浮気相手は、配偶者に対して求償権を有することとなります。

以上のように考えると、不貞行為に基づく損害賠償請求権について、配偶者のみについて慰謝料請求を免除したとしても、浮気相手により求償権を行使され、実体的に半額程度の請求がなされるおそれはありえるとも思えそうです。

実際には、求償権放棄による条項を入れる、配偶者分の負担部分を考慮した金額での合意書を作成するといったことはあり得ます。

どのような損害賠償請求の方法を行うのかについては、弁護士に相談をしていくとよいでしょう。

不倫慰謝料は弁護士に相談をしてどのような解決を図っていくことをアドバイスを受けることをオススメいたします。

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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