過去の浮気で慰謝料請求、離婚はできるのでしょうか。
慰謝料を請求したい過去にあった浮気についてはもはや慰謝料請求や離婚請求をしていくことはできないのでしょうか。
不貞行為にもとづき損害賠償請求や離婚を求めていくためには、証拠により立証が必要とありますが、時間の経過があることで、慰謝料請求や離婚請求が困難とことがあります。
そこで、この記事では、過去にあった不貞行為により、慰謝料請求や離婚請求をすることができるのかについて解説させていただきます。
離婚について、不貞行為の時期にはよりますが、他の事情と合わせて婚姻関係が破綻しているといえる場合には、離婚の可能性はあるでしょう。
現在の状況、証拠を踏まえて、弁護士とどのような対応をしていくのかを検討するとよいでしょう。
Contents
過去の浮気とは
過去の浮気や不倫について、すべての行為が法的に問題となるわけではありません。
法律上問題となる不貞行為とは、配偶者のある者が配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうものと解されています。
民法では770条1項1号では、離婚事由として、夫婦の一方に次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができると定められており、配偶者に不貞な行為があったときには、裁判所に離婚を求めていくことができます。
もっとも、不貞行為について宥恕の意思が示されていたとして、婚姻関係が破綻しているといえるのかについては問題があります。
一方で、不貞行為を行った場合には、夫婦共同生活の平穏を害する行為であるとして、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)がなされることとなります。
過去の不貞行為については、不法行為に基づく損害賠償請求権については、損害および加害者を知ったときから3年間との規定があることから消滅時効により請求ができるのかが問題となることがありえます。
したがって、過去の浮気については一定の時間を挟んでいるために、どのような請求が可能を検討しておくことが必要となるでしょう。
過去の浮気を許せないのはなぜなのか。
なぜ、過去にした浮気や不倫を許すことができないといった気持ちとなってしまうのでしょうか。
弁護士は心の専門家ではないため、言及することはあまり適切ではないのかもしれません。
許せないといった怒りが生じることについて、アンガーマネジメントの世界では、
① 本来は分かってほしいなど、様々なマイナスな感情が一時感情として存在し、
② 一時感情に対して、○○すべきという自己の理想や価値観が引き金となって、
③ 怒りという二次感情が発生していくとのプロセスを辿るといわれています。
過去に浮気があった場合でも、子どもために、今は許して生活を続けるといったことで収めた場合はあるでしょう。
しかし、その後の夫婦生活において、性格の不一致などでの不安の感情やコロナ下での生活、将来への経済的不安、子どもの進学などで様々なマイナスの感情や状況が発生していくこととなります。
そして、浮気や不倫をした夫や妻であれば、悪いことをしたことを反省して家族のために贖罪をすべきである、配偶者として家族を支えるべき、家事を手伝うべきといった自身が考えている自己の理想や価値観と大きなギャップが生じたとき、怒りの感情が湧いてくるといったこととなるでしょう。
そのため、怒りを落ち着かせるためには、
① 自分がかかえているマイナスの感情や状態は何があるのか
個々のマイナスの感情や状態に把握することで、怒りの感情の背後にある第一感情はなんであるのかを把握していくとよいでしょう。
そして、個々のマイナスの感情や状態を溜めないように、カウンセリングなど相談をしていくとよいでしょう。
② 自分はどのようなべきという理念を持っているのか
ご自身が抱えられている理念が適切なべきである場合にはよいのですが、べきを緩めることができるのかなどを検討していくとよいでしょう。
したがって、過去の浮気で怒りを感じた場合には、怒りについて整理をするとよいでしょう。
過去の浮気の慰謝料の時効は3年
(1)時効制度はなぜ存在するのか
民法724条では、損害および加害者を知ったときから3年間の短期消滅時効が設けられています。
このような消滅時効の制度が設けられている趣旨としては、不法行為により損害が発生していることを知りながら長期間放置していた者を保護することはできないこと、不法行為では長期間の放置をすることは損害および加害行為の立証や反証が困難であることなどが根拠とされています。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1号 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
2号 不法行為の時から20年間行使しないとき。
(2)過去の浮気について時効の起算点とは
・「損害を知ったとき」とは、被害者が損害の発生を現実に認識したときであると解されています(最高裁平成14年1月29日判決)。
そのため、現実に不貞行為があったとしても、不貞行為があったことを現実に認識していない場合には、時効の起算点が始まっていないこととなります。
したがって、過去の浮気について、不貞行為があったことをいつ知ったのかが問題となります。
浮気、不倫についていつ知ったのかについては判断が難しいことがあります。
単に外泊が多く浮気を疑っていたのみといったときには、不貞行為を知ったときとまではいえないでしょう。
例えば、探偵事務所での調査報告書や携帯電話の写真により配偶者以外の者と性的関係を持ったことを認識したレベルが必要となってくるでしょう。
・「加害者を知ったとき」とは、損害請求を請求するべき相手方を知ったときと解されています。
例えば、配偶者に不貞行為があることを知っていたとしても、浮気相手がどこの誰であるのかを知らない場合には、
⇒ 配偶者に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求権が行使できる程度に相手方を知っていたといえる一方で、
⇒ 浮気相手に対しては、不法行為に基づき損害賠償請求権が行使できる程度に加害者を知ったときとはいえません。
そのため、配偶者に対する慰謝料請求と浮気相手に対する慰謝料請求については時効の起算点が異なる場合があります。
・離婚慰謝料については、配偶者に対しては、別途請求が検討ができます。
そして、配偶者に対する請求の場合には不貞行為に基づく損害賠償請求以外に、離婚慰謝料として損害賠償請求ができる場合があるため、事案によっては浮気、不倫から3年を経過した配偶者に対しては、離婚慰謝料での請求で金銭の回収を図るといったことは考えられます。
配偶者に対しては、過去の浮気、不倫について離婚慰謝料で調整をするといったことがあり得るでしょう。
最高裁第三小法廷平成31年2月19日判決は、離婚慰謝料については、夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなど夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限りは、浮気相手に対しては請求することは難しいこととなります。
そのため、浮気相手に対して、離婚慰謝料に対する請求としては困難ということになるでしょう。
最高裁平成31年2月19日判決 要旨
・夫婦の一方は,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ,本件は,夫婦間ではなく,夫婦の一方が,他方と不貞関係にあった第三者に対して,離婚に伴う慰謝料を請求するものである。
・夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められ るべき事柄である。
・したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。・第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
・以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。
したがって、誰に対する請求なのか、いつの時点で住所、氏名など請求が具体的に可能となった時期はいつなのかを検討することが大切となってきます。
なお、不法行為のときから20年という規定が存在するため、相手方を知らなかったとしても、20年前の不貞行為については請求を行うことが困難な場合はあり得るでしょう。
(3)時効となる前に弁護士から請求を行いましょう
時効の完成を阻止するためには、裁判樹夫の請求等により時効の完成猶予や更新を行うことが考えられます(民法147条)。
催告があったときには、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成がしないこと(民法150条)や、協議を行う旨の合意により時効の完成の猶予(民法151条)を行うこと、承認による時効の更新(民法152条)などが存在します。
現時点での適切な対応をするために、できるだけ早期に弁護士に慰謝料請求を依頼していくことをオススメ致します。
過去の浮気で離婚はできるか
離婚をするための流れとしては、協議離婚、調停離婚、裁判離婚を経ることとなります。
協議離婚や調停離婚の場合には、当事者で離婚について合意ができた場合には、離婚をすることができます。
しかし、裁判離婚をする場合には、離婚原因が必要となります。
離婚原因である不貞行為については、時期の定めがあるわけではありません。
不貞行為があった以上は離婚原因となる事実があるように思えますが、夫婦が不貞行為があったことを宥恕して、夫婦関係を続けていた場合には、婚姻関係の破綻があったといえるのかが問題となります。
最終的には、過去の浮気、不倫があったことを踏まえて、別居などと婚姻を継続し難い重大な事由といえるような婚姻関係の破綻が認められれば離婚が認容されることとなります。
婚姻関係を継続し難い重大な事由として、
・暴行や虐待
・重大な侮辱
・不老・浪費・借財など
・犯罪行為・服役
・宗教活動
・長期間の別居など
などの事情が考慮して決定がなされていきます。
離婚請求については、原因以外に財産、親権など決めていかなければならないことはありますので、弁護士に相談されることをオススメ致します。
まとめ
過去の浮気、不倫については、慰謝料請求や離婚請求をするにあたって、時間の経過があるだけ検討しなければならないことが多くあります。
そして、現実に請求ができるのかについては案件ごとに異なっていくこととなるでしょう。
過去の浮気、不倫の慰謝料請求や離婚請求について、弁護士に相談、依頼をしていくとよいでしょう。
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