風俗嬢であった場合には、浮気・不倫慰謝料請求を拒否できないか。 |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

風俗嬢であった場合には、浮気・不倫慰謝料請求を拒否できないか。

夫が風俗嬢やホステスなどと肉体関係をもった場合には、損害賠償請求はあり得るのでしょうか。

一時は、枕営業に対する損害賠償請求はできないといった記事などが出て、実務としてどのように影響が及ぶのかが議論されることがありました。

もっとも、風俗嬢であった場合であっても、一律に損害賠償請求ができなくなるわけではなく、請求できる場合と請求ができない場合とが存在します。

そこで、このコラムでは、配偶者が風俗嬢やホステスと肉体関係をもったことが浮気や不倫として慰謝料を請求することができるのかについて解説させていただきます。

風俗で働いていたときの妻から不倫をしたとして損害賠償請求がなされています。支払わなければならないのでしょうか。

顧客の性的処理を商売の営業として正当業務行為に入る場合には、損害賠償請求を退けることができる場合はあります。
しかし、顧客との関係性、店舗外でのかかわり方など夫婦生活にどのような影響が及んだのかなどケースバイケースとなりますので、弁護士にご相談されることをオススメ致します。

 損害賠償を請求できる根拠とは何か。

浮気、不倫の案件で、損害賠償請求ができるためには、民法などの法律が定めた要件、条件を満たしていなければなりません。

民法709条には、
・故意または過失によって
・他人の権利
・又は法律上保護される利益を
・侵害した者は

これによって生じた損害を賠償する責任を負うとされています。

不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことであり、

不貞行為を行った者は、夫婦婚姻生活の平穏という権利や法律上保護に値する利益を侵害するため、不法行為に基づく損害賠償責任を負うものと考えられるでしょう。

 風俗嬢やホステスの場合には権利侵害はあるのか。

 

不貞行為が、配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の者との性的関係を結ぶといった場合には、風俗嬢やホステスと関係を結んだことは夫婦婚姻生活の平穏を害するといったことにはならないのでしょうか。

これについては考え方が分かれています。

例えば、東京地方裁判所平成26年4月14日の裁判例を見てみましょう

東京地方裁判所平成26年4月14日判決では、ソープランドでの性交渉や枕営業について、顧客の性的処理に商売として応じたに過ぎないため、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないと判断しました。

このように、単に顧客に性的処理を商売で応じたに過ぎない場合には、不法行為責任が否定されることがあり得ます。

一方で、東京地方裁判所平成27年7月27日判決では、店舗外で肉体関係を持ったことが違法性を帯びるとして、不法行為に該当すると判断されました。

したがって、風俗嬢として単に顧客に性的処理を商売で応じるといった正当な業務範囲であるのか、それとも業務範囲を超えるような夫婦婚姻共同生活の平和を害するレベルに至っているのかどうかにより判断が分かれてくることとなるでしょう。

 

なお、下級審の裁判例については、他の判断を拘束するものではなく、個別の事案、証拠のもとになされた判断となります。

同様の事案があった際にどのような判断がなされていたのかを主張することはありますが、証拠やもとになった経緯などが異なる場合には、同様の判断がなされるわけではないといった点には注意をしておきましょう。

上記の何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないという部分についても、枕営業であっても、それが婚姻共同生活の平和を害するものであるとして上で、通常業務の範囲である限りには、正当業務行為であるとして、違法性が阻却されるとの判断がなされるべきではないかといった評価がなされることがあります。

 

 東京地方裁判所平成26年4月14日判決について

(1)事実の概要

 

この事件では、原告が、クラブのママであった被告に対して、原告の夫との間で7年余りにわたる継続的な不貞行為を行ったとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、400万円の支払いを求めた事案です。

この裁判では、不貞行為の存否自体に当事者に争いがありましたが、仮に、不貞行為が認められるとしても、不貞行為の内容について

① クラブ及びそのママとして、優良顧客であった原告の夫との間で、優良顧客状態の継続期間中に、主として土曜日にともに昼食をとった後に、ホテルにいって性行為を行い、その終了後に別れることを月1、2回繰り返したものであること

② 原告の夫の陳述書によれは、7年間に2,3回,お小遣いとして1万円を渡したことがあったこと,平成24年の後半に入って以降は,原告の夫の方から積極的に誘うこともなくなり,被告からの連絡も来なくなって,自然消滅のような形で関係が終わったことが記載されていること

③ 原告の夫は、平成12年から株式会社の代表取締役を務めており、クラブには,平成17年3月に行って以来,月に1,2回の頻度で通うようになったこと,一人で行くことが多かったが,同業者を連れて行くこともあったこと,原告の夫は本件クラブに行ったのは平成25年4月26日が最後であったこと

などが認定されました。

(2)裁判所の判断枠組み

 

裁判所は、

【第三者が不法行為を負う根拠】

① 第三者が一方配偶者と肉体関係を持つことが他方配偶者に対する不法行為を構成するのは、当該不貞行為が他方配偶者に対する婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益に対する侵害行為に該当することによるもの

【ソープランドでの性交渉などは婚姻共同生活の平穏を害するものではない】

② ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には,当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,たとえそれが長年にわたり頻回に行われ,そのことを知った妻が不快感や嫌悪感を抱いて精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解される。

との判断の枠組みを示しました。
そのうえで、

【枕営業というものが存在していること】

③ クラブのママやホステスが、自分を目当てとして定期的にクラブに通ってくれる優良顧客クラブが義務付けている同伴出勤に付き合ってくれる顧客を確保するために、様々な営業活動を行っている。
その中には,顧客の明示的又は黙示的な要求に応じるなどして、当該顧客と性交渉をする「枕営業」と呼ばれる営業活動を行う者も少なからずいることは公知の事実である。

【枕営業とソープランドの違い、対価性の評価について】

④ このような「枕営業」の場合には、
・ソープランドに勤務する女性の場合のように、性行為への直接的な対価が支払われるものでない
・ソープランドに勤務する女性が顧客の選り好みをすることができない
のに対して,
・クラブのママやホステスが「枕営業」をする顧客を自分の意思で選択することができる。

【対価の支払いの有無】

⑤ しかしながら、対価の支払いについては、「枕営業」の相手方となった顧客がクラブに通って、クラブに代金を支払う中から間接的に「枕営業」の対価が支払われているものであって、ソープランドに勤務する女性との違いは、対価が直接的なものであるか。間接的なものであるかの差に過ぎない。

【顧客を自分の意思で選択できるかの有無】

⑥ 顧客を自分の意思で選択できることについては,ソープランドとは異なる形態での売春においては、例えば、出会い系サイトを用いた売春や、いわゆるデートクラブなどのように,売春婦が性交渉に応ずる顧客を選択することができる形態のもの

したがって、「枕営業」を売春と別異に扱う理由とはなり得ない。

【枕営業であると認められるときには、婚姻共同生活の平穏を害するものではない】

⑦ クラブのママないしホステスが、顧客と性交渉を反復・継続したとしても、それが「枕営業」であると認められる場合には、

売春婦の場合と同様に、

⑧ 顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、のことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。

(3)本件事案での分析・あてはめについて

 

① 原告の夫は,不貞行為開始時点の平成17年8月の約5か月前から、本件クラブに月に1,2回は定期的に通い、企業の社長として同業者を連れて行くこともあったものであった

② 本件クラブやそのママである被告にとっての優良顧客であり,そのような優良顧客状態が本件不貞行為終了時まで続いていた

③ 原告の夫がしていた不貞行為の態様は,主として土曜日に,共に昼食を摂った後に,ホテルに行って性行為をし、その終了後に別れるというもので,「枕営業」における性交渉の典型的な態様に合致する上、

④ このような態様の性交渉を月に1,2回繰り返したというものであって、その頻度は原告の夫が本件クラブを訪れる頻度と整合していたのであるから

⑤ 原告の夫の性交渉の相手方が被告であるとすれば、当該性交渉は典型的な「枕営業」に該当すると認めるのが相当である。

⑥ なお、原告は、7年以上にわたって原告の夫と肉体関係を持ち続けた被告の行為は、異性としての好意がなければ存続し得ないなどと主張するが、原告主張の本件不貞行為の期間中、原告の夫が本件クラブの優良顧客であり続けたのであり,そうである以上,その期間「枕営業」が続くことは何ら不自然ではないから,原告の上記主張を採用することはできない。

として、不法行為を構成しないと判断しました。

 性的サービスを千絵興する店舗で肉体関係を店舗外で持った場合

東京地方裁判所平成27年7月27判決では、肉体関係を店舗外においてもった場合において、単に性的欲求の処理にとどまらず、好意をもっていたからこそ、店舗の他の従業員ではなく、店舗外での肉体関係の継続を求めたものであり、故意、過失があるとして、専ら対価を得る目的で肉体関係をもったとしても、これが夫婦関係に悪影響を及ぼすのみならず、婚姻共同生活の平和を害し、妻としての権利を侵害することになることを十分認識していたと認められるとして、店舗外において肉体関係を持ったことは違法性を帯び、不法行為に該当することを示しました。

性交渉について対価を有するものがあったとしても、店舗外など業務の範囲外を超える行為を行っていた場合には、婚姻共同生活を平和を害する行為であるとして、不法行為責任が認められることがあり得るということになるでしょう。

 まとめ

 

風俗嬢が顧客との性的関係をもった場合においては、店舗内など対価授受を伴う正当業務行為の範囲である場合や夫婦共同生活の平和を害するものでない限りは、損害賠償請求を受ける可能性を下げる要素ということとなるでしょう。

もっとも、店舗外での性的関係であった場合や妻の地位を害するように夫婦共同生活への不当な干渉などに至っている場合には、対価を伴う性交渉があったとしても、不法行為に基づく損害賠償請求が認容されることはあり得るでしょう。

単にお店の顧客の求めに応じた行為であるのかなどについて主張、立証ができるように弁護士に相談をしていくとよいでしょう。

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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