不貞慰謝料を請求されたけど支払う余裕がない!どうしたらいいの? |大阪天王寺で不倫慰謝料弁護士をお探しなら

不貞慰謝料を請求されたけど支払う余裕がない!どうしたらいいの?

不貞相手の配偶者から慰謝料を請求された

高額の請求だったけど,貯金もなく今すぐ支払うことができない

慰謝料を減額する方法はないか

 

慰謝料を請求された方の相談で特に多い内容が,「慰謝料を減額できないか」「請求された額を用意できない」というものです。

請求された慰謝料額を支払うことができないため,どのように対応して良いか分からず悩んでおられる方は少なくないはずです。減額したり,分割の交渉をすることも考えられますが,分割で支払っていくデメリット等はないのか不安に思われるかもしれません。

ここでは,請求された慰謝料を支払えない場合の考え得る対応方法と,メリット・デメリット等をお話ししていきます。

 

1.慰謝料の相場

慰謝料は,請求された額をそのまま支払わなければならないわけではありません。不貞の慰謝料は裁判で請求されるケースも多く,事例の蓄積が豊富であるため,凡その相場というものは存在します。

そこで,まずは慰謝料の相場について簡単にお話しします。

⑴高額になりつつある相場

不貞の慰謝料は,不貞行為によって婚姻関係を破綻させたことに対する損害の賠償という性質を持っています。

そのため,これまでの裁判例では,

不貞行為によって夫婦が別居や離婚をした場合には,慰謝料として100万円~200万円

別居等に至っていない場合には50万円~100万円

というように,婚姻関係の破綻の程度によって慰謝料の相場が異なっていました。

 

しかし,平成31年に,最高裁判所で「夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめた」という特段の事情がない限り,離婚に関する責任を不貞相手への慰謝料請求で負わせることはできないという判決が出されました(平成31年2月19日判決)。

このことから,不貞相手が負うべき慰謝料の負担が,離婚の有無によって左右される可能性は以前よりも低くなったと考えられます。一方で,近年の裁判例を見ると,離婚に至っていない場合であっても,不貞相手への慰謝料請求で100万円を超える判決が出るケースが増えてきているように見受けられます。

つまり,不貞慰謝料の相場は,近年増加の傾向にあると考えられるのです。

⑵慰謝料額を決定する要素は?

不貞慰謝料には凡その相場が存在しますが,不貞の期間やきっかけ等,内容に1つとして同じものは存在しません。そのため,具体的な慰謝料の額も個々の事情によって決定されるものです。

具体的には,

婚姻期間の長さや子供の年齢・人数等の慰謝料を請求する側の事情

不貞期間の長さや不貞に果たした役割の大きさ(積極性等),社会的地位等の慰謝料を請求される側の事情

が慰謝料額決定の考慮要素としてあげられるでしょう。

これら具体的な事情を総合的に考慮して,裁判所は慰謝料の額を決定していくのです。

 

2.請求された慰謝料が相場からかけ離れていたら…

既にお話ししたように,慰謝料には凡その相場が存在します。相場を理解したうえで,それ以上の額を任意で支払うことももちろん可能です。しかし,一定程度の相場が存在する以上,相場に近い金額を支払えば,法的な金銭での賠償責任という意味では,十分なのです。

そのため,不貞相手の配偶者が300万円や500万円等,相場とかけ離れた金額を請求してきた場合には,相場通りの金額を支払うよう,減額交渉をするメリットは大きいでしょう。

 

相手が代理人を立て弁護士から請求しているのであれば,弁護士は相場観を把握していますから,比較的話は通じやすいかもしれません。

しかし,不貞相手の配偶者本人からの請求であれば,そうはいきません。請求額が相場からかけ離れていること,仮に訴訟を提起したとしても裁判所は相場通りの額しか認容しないであろうこと等を誠意をもって伝え,減額交渉を進める必要があります。

 

3.任意での分割交渉

⑴一括での支払いができない場合は…

相手の請求額が相場通りであっても,金銭的に余裕がなく一括で支払えないという方も少なくないでしょう。一方,訴訟を提起されてしまえば,少なくとも半年以上は結果が出るまでに時間を要しますし,期日への出廷や書面の作成等,負担も大きくなります

 

そこで,支払いには応じるから毎月の分割払いにしてほしい,という交渉を行う方法が考えられます。交渉にあたっては,金銭的に余裕がないこと,現状の収入では毎月の支払額に限界があること,等を正直に伝えるべきです。

請求をする側も,仮に訴訟を提起して判決を取っても,実際に賠償金を支払ってもらえなかったり,強制執行する財産がないのであれば,宝の持ち腐れです。ですから,訴訟をしても支払いを確保できないのであれば,交渉の段階で分割であっても支払いの約束をしてもらおう,と考えるでしょう。

そのため,支払う余裕がないことに加え,「判決をとっても無駄になる可能性が高い」ということを請求者に理解してもらうことが大切なのです。

⑵公正証書の作成

「分割で支払う」と口では言っても,将来に渡って全額の支払いが100%約束されているわけではありません。請求する側も,支払いが滞るリスクがあるなら分割は嫌だ,と考えるでしょう。

 

そこで,分割での金銭支払いを将来に渡って確保するために,「公正証書」というものが作成されます。後で詳しくお話ししますが,公正証書は判決文と同じ効力を有しています。将来,分割金の支払いが滞れば,公正証書に基づいて強制執行が可能になるのです。

公正証書を作成することで,慰謝料を支払う側は強制執行をされるリスクを負うことになります。しかし,きちんと支払いを継続すれば強制執行されることはありません。また,公正証書を作成することで請求側が安心して分割での支払いを承諾してくれる可能性は高まるでしょうから,分割での和解を希望するのであれば,請求される側も公正証書を作成するメリットは大きいのです。

 

4.裁判上の和解で分割交渉

仮に和解交渉で話がまとまらず訴訟を提起されても,必ずしも判決まで取られてしまうわけではありません。裁判に移行しても,裁判官の主導のもと,裁判上の和解が試行されます。

交渉段階で合意できなかったのに,再度交渉をしても意味がないのではないか,と思われるかもしれません。ですが,裁判上の和解は,判決を出す裁判官本人が立ち会っての和解です。その裁判官から「このくらいの額で和解したらどうですか」と,一定程度の方向性を示されれば,当事者としては「判決が出てもこれくらいかもしれない」と予測ができますから,慰謝料の額に納得しやすいのではないでしょうか。

実際,訴訟を提起されても判決まで進まずに和解で終了している事案も相当数存在します。

また,裁判上の和解もあくまで「和解」です。そのため,双方が合意すればこの段階でも分割での支払いを約束することも可能です。

裁判上の和解が成立すると,「和解調書」という書類が作成されます。この和解調書も,判決と同様の効果を有するため,後でお話しするように強制執行が可能になります。

 

5.判決を取られたら…

裁判上の和解も成立せず判決まで進み,裁判所に最終的な判断をしてもらったとしましょう。

判決では,被告となっている不貞行為の当事者が支払うべき慰謝料額が示されます。当然,分割で支払いなさい,という内容の判決が出ることはありません。また,支払期限も定められず,支払いが遅れれば遅れるほど遅延損害金が増えていくことになります。

そして,判決がある以上,判決で認容された慰謝料額の支払いがなければ,遅延損害金の分も含め,強制執行されるリスクが残ってしまいます。

 

6.分割交渉で決まった支払いが滞ったら…

⑴強制執行という手続

任意の交渉で分割の約束をした場合,「公正証書」を作成することが多いでしょう。また,裁判上で和解した場合は,分割であっても一括であっても,「和解調書」が作成されます。

これらの書類は判決と同じく,書面に記載されている金銭の支払いが実現されていない場合は,手続きの差はありますが,最終的には「強制執行」という手段によって金銭債権の満足を得ることができるものです。

⑵強制執行の具体的な中身は?

不動産や自動車等めぼしい財産がある場合は,強制執行によって現金に換えられ,慰謝料の支払いに充てられます。

 

預貯金口座が知られていれば,口座を差し押さえることで口座の残高が慰謝料に充てられるでしょう。定期預金の場合も同様です。口座を知られていなくても,弁護士等が調査を行えば,預貯金の口座を突き止められてしまう可能性があります。

 

更に,職場を知られていれば,給料を差し押さえられる可能性があります。差し押さえられるは全額ではなく,基本的に給料の4分の1までです(ただし,手取りが28万円を超えている場合は,21万円を超える部分が差し押さえの対象です)。受け取ることができる給料がかなり減ってしまう上,裁判所から職場に差し押さえの通知が届きますから,職場にも何らかの事情で給料が差し押さえられていることを知られてしまいます。

⑶リスクを負っても分割交渉をするメリット

このように,分割の合意をしても,支払いが滞れば被る不利益はかなり大きいと言えます。

ですが,約束通りの支払いを継続すれば不利益を被ることはありません。更に,慰謝料を支払う側がこのような多大なリスクを負っていることが分かるため,慰謝料を請求する側も「公正証書を作成するなら分割でも仕方ない」と納得できるのです。

 

7.慰謝料請求を無視したら…

慰謝料が支払えないからと,請求されても回答をせずに放置する,という方法は得策ではありません。

仮に代理人である弁護士から請求されているのであれば,不貞の証拠等も十分に揃っている可能性が高いです。そのため,回答をしなければ早い段階で訴訟を提起され,裁判所に出廷する結果となります。裁判所から訴状が届いているのに無視をすれば,請求者である原告の主張が認められ,一定額の慰謝料支払いを命じる判決が出るでしょう。

不貞相手の配偶者本人から請求されている場合,無視した結果請求を諦める,という可能性はゼロではありません。証拠がなく訴訟をしても不貞の事実を証明できない,という事情があれば相手方は請求を諦めるかもしれません。しかし多くの場合,弁護士に相談する等して訴訟提起に踏み切るでしょう。

訴訟になった場合,交渉段階で慰謝料請求を無視したことは,「反省の態度がない」と見られ,慰謝料増額の考慮要素と判断される可能性もあります。

また,既にお話ししたように,訴訟を提起されて判決を取られ支払いが滞れば,強制執行によって財産や給料を差し押さえられるリスクが高まります。

以上のような理由から,慰謝料を請求された場合にこれを無視することは,得策ではないのです。

 

8.まとめ

慰謝料を請求されても,必ずしも言われた額を支払わなければならないわけではありません。

相場から離れていれば,減額交渉をするべきです。また,相場通りの額でも支払いが厳しければその事情を伝えて減額交渉をしたり,分割での支払い交渉を行うことも可能です。

ですが,慰謝料を請求された方がご自身で交渉を行うのは負担が大きいでしょう。また,相場がどれくらいなのか,分割にしてもらうためにどのような事情を伝えれば良いのか等,交渉に際して注意すべきことは少なくありません。

慰謝料を請求され,その額でお困りの方は,是非一度弁護士にご相談ください。

 

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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