離婚の種類
厚生労働省の令和元年(2019年)人口動態統計(確定数)の概要によれば、離婚件数は、20万8496組と離婚に至ってしまう夫婦は少数ではないことがわかります。離婚に至ってしまう原因は、性格の不一致、異性関係、暴力を振るう、酒を飲みすぎる、浪費するなど様々な事情があり、婚姻生活を続けるべきか、離婚をして新しい幸せとなるのかといったことをよく検討し、選択をしていくこととなります。よりよい選択をしていくために、このページでは、浮気・不倫の伴う離婚の基礎知識として離婚の種類とその流れを解説させていただきます。
1 離婚の種類
まず、離婚するかについてはご自身が離婚をされたい理由は何かを考えることが大切です。離婚をされたい理由には様々なものがありますが、これ以上は婚姻関係を続けることができない、婚姻関係を続けることはご自身にとって不幸になってしまう、離婚をしてご自身の幸せにしたいと思われるのであれば、離婚をするといったことが選択肢としてもよいかもしれません。離婚の意思を決めていくためにも、法的にどのようなことが想定されるのかを検討しておくとよいでしょう。
そして、離婚の種類には、(1)協議離婚、(2)調停離婚、(3)審判離婚、(4)裁判離婚といった制度があります。なお、審判離婚については、あまり利用されるケースはないため、協議、調停、裁判の離婚について押さえておくとよいでしょう。
(1)協議離婚
協議離婚とは、当事者で話し合いを行い、離婚に合意をすることで離婚を行うものです。離婚の中で大部分は協議離婚により解決がなされています。離婚届を出すことに合意をして、親権者を定め、離婚をするといったことがあり得ます。
協議離婚では、離婚届を出すことに合意することで簡易にできますが、財産分与、離婚慰謝料、年金分割、面会交流、養育費などきちんとした話し合いができていないまま離婚が成立していることがあり得ます。離婚後にこれらのきちんと対応してもらうことには一定の困難が伴います。財産分与は離婚から2年しか行うことができず、養育費もきちんとした定めがなければ請求ができません。
既に協議離婚をしてしまった場合や今後、協議離婚を検討されている方については、弁護士にあらかじめ相談を行い、公正証書で離婚協議書を作成するなどを準備しておくとよいでしょう。
(2)調停離婚
当事者での話し合いでの解決が難しい場合や将来の不履行が発生した場合に強制執行手続きができるようにきちんとした合意を行っていくことを目指して家庭裁判所での調停で離婚を行う方法があります。調停離婚では家庭裁判所の調停委員会が当事者の間に入って話し合いを中立的な立場から調整を行っていくこととなります。調停離婚では、家庭裁判所が間に入っているために、法的に妥当な解決が図りやすいとの側面があります。
もっとも、調停離婚は、あくまで当事者の合意が前提となっているため、離婚自体を拒否している場合には解決が難しいこととなります。また、法的に妥当な判断を行うためには、適切な証拠の提出と主張が欠かせません。主張や証拠をうまく使うことができないために、ご自身の意見を十分に反映させることができない場合があり得ます。
家庭裁判所の手続きを経るものであることから、調停離婚においても弁護士を手続代理人として依頼を行い、継続的に法律相談をしてもらうといったことを行うとよいでしょう。
(3)審判離婚
調停が成立しない場合であっても、離婚については合意をしており、財産分与等の法的判断により解決ができる場合には、家庭裁判所が調停に代わる審判によって離婚をする場合があり得ます。家庭裁判所が相当といえる判断を行った場合にできるものであり、不服がある場合には、審判書を受け取った日から2週間以内に不服申立てを行わなければ確定します。
(4)裁判離婚
調停が不成立となった場合に、家庭裁判所の判決よって離婚をする裁判離婚をすることがあります。裁判離婚では、通常の裁判と同様に、訴状を裁判所に提出し、当事者から準備書面の提出が行われ、数回の口頭弁論期日、弁論準備手続期日、和解期日、尋問期日、判決期日といった流れとなってきます。最初から裁判離婚をすることは原則としてできず、調停前置主義により一旦は調停での話し合いをしてからとの流れとなります。裁判離婚でも多くの案件は口頭弁論期日、弁論準備手続期日でおおよその争点に対する裁判所の心証が形成されており、判決となった場合にはどのような判断となるかが想定されます。裁判所がこれらを明確にするかは裁判官の判断によりますが、一定の心証開示を受け、判決を受けた場合に近い形で、和解により離婚が成立するパターンも多いでしょう。判決により離婚が成立するパターンは全離婚のうち1%ほどといわれています。
2 協議離婚について
(1)協議離婚の流れ
① 離婚の条件に優先順位をつけて、獲得目標を明確にする。
協議離婚を進めるに当たっては、離婚の合意ができそうか、難しいそうかを検討します。また、ご自身の中で、離婚を行うとすればどのような条件を出すのか、どのような条件であれば、離婚に応じてもよいかといったことを想定しておくこととなります。離婚をする場合には、不満があり多くのことを要求したいと考えられるかもしれません。もっとも、すべての不満を解消して離婚ができる場合は稀であり、どの条件を最も成し遂げたい目標であるのかを明確として、優先順位をつけて交渉に臨むとよいでしょう。
② 協議離婚で検討すべき項目、履行確保をする条項案を準備する
協議離婚で法的事項として合意をしておくべきこととしては、子どもの関係において、親権、養育費、お金の関係では、財産分与、慰謝料、年金分割となります。また、養育費を将来にわたって受け取る場合には、将来の履行確保を考えておくこととなります。
協議離婚についての条件をまとめておき、相手方との話し合いを行っていきます。話し合いを一度にまとめていくことは大変であるため、個別に念書といった合意書をまとめていくとよいでしょ。全体の内容がまとまっていった場合には、離婚協議書を公正証書で作成し、将来の履行確保を行って協議離婚をまとめ、離婚届を提出するといった流れをたどるとよいと考えられます。
③ 不受理申請制度を利用しておく
なお、協議離婚は話し合いであるものの、親権での争いとなり、相手方が親権者欄に勝手に相手方名を記載したうえで離婚届を提出しています危険性があります。合意をしていない離婚届を出すことは有印私文書偽造・行使罪や電磁的公正証書原本不実記録罪が成立する犯罪ですが、無効であることを主張していかなければなりません。離婚届について、本籍地の市区町村役場などに、不受理申請制度を利用しておくこととなるでしょう。
④ 相手方と協議し、離婚協議書、公正証書にまとめる。
②、③を準備したうえで、相手方と離婚の話し合いを行います。ご自身での協議が不安である場合には弁護士に代理を依頼するとよいでしょう。相手方との協議を行い、修正点での受け入れが可能かどうかを踏まえて、再度、協議書案をまとめていくこととなります。
離婚協議書に伴い、離婚届の提出、動産などの引渡し、社会保険などの届出を行い、離婚をすることとなるでしょう。法的にきちんとした書面を作成するのであれば、弁護士に協議離婚書の作成を依頼し、強制執行が可能な形での公正証書の作成などを行うとよいでしょう。
(2)協議離婚で検討すべき事項
① 親権
親権とは、未成年者の子どもが一人前の社会人となれるように監護教育するための権利、義務のことをいいます。子どもの利益、子どもの福祉の観点から、誰を親権者とすべきかを検討しておきます。
② 養育費
親は親権者であるか否かにかかわらず、自己の水準に応じた生活を子どものさせるために生活保持義務を負います。子どもと同居をしている親から非同居親に対して、収入に応じた養育費を請求していくこととなります。養育費については、それぞれの収入を確認し、家庭裁判所での養育費・婚姻費用算定表をもとに算定を行うとよいでしょう。
③ 面会交流
子どもにとっては、非同居親に対して交流を行うことは成長にとって大切なこととなります。子どもの年齢や意思にはよりますが、1か月に1回程度の面会交流を定めるなどを検討しておくとよいでしょう。
④ 財産分与
夫婦は婚姻関係を解消するにあたって夫婦共有財産の清算を行います。財産形成の貢献度に応じて定めていますが、婚姻後から別居時までの財産を2分の1としたものがひとつの基準となるでしょう。扶養的財産分与、慰謝料的財産分与などにより調整し、清算したい金額を定めるとよいでしょう。
⑤ 慰謝料
離婚原因に対して不貞行為、暴力、暴言などの不法行為があった場合には、慰謝料請求を定めることがあります。不法行為の程度に応じて300万円といった金額をさだめて請求することがあり得るでしょう。
⑥ 年金分割
夫婦であった一方の請求により厚生労働大臣等が当該離婚等について対象期間にかかる被保険者期間の標準報酬等の改定を行う制度です。
⑦ 復氏、社会保険制度などを準備しておく
(3)協議離婚で弁護士に依頼できること
協議離婚においては、離婚協議書の作成、公正証書の作成、協議離婚の内容について話し合いの代理を依頼することが依頼できます。弁護士に依頼することのメリットは、法的に妥当な協議書を作成することができる点です。また、代理を依頼することで弁護士との話し合いを依頼することがあり得るでしょう。
(4)公正証書の作成
公正証書に「金銭債務について履行を怠った場合は強制執行に服する」といって強制執行認諾文言付公正証書を交わし、送達証明書などを取得しておくことで履行を確保することがあり得ます。公証人役場に公正証書の文案を送付し、委任状の取得や公正証書作成日程を決めて、作成を行っていくことがあり得るでしょう。
3 調停離婚について
(1)調停離婚の流れ
調停離婚では、離婚原因を確認し、親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割について記載した申立書を作成し、管轄の家庭裁判所に提出することとなります。調停期日が定められ、それぞれの調停期日に争点についての協議を行います。調停期日では2名の調停員がつきそれぞれから別室で話を聴取して話し合いをまとめていくことが多いでしょう。子の親権に対立がある場合には家庭裁判所調査官が付き、両親および子から子の福祉のために誰を親権者とすべきことが適切かの調査がなされます。調停期日において、財産分与、養育費、面会交流について調停条項を作成していきます。調停条項について当事者の合意がまとまった場合には、裁判官から調停条項の読み上げが行われることで調停が成立することになります。合意が成立する見込みがないときには、調停が不成立として、審判に移行するか、訴訟に移行するかに進んでいきます。
(2)調停離婚での進め方
① 調停の期日ごとに解決すべき課題を明確にする
調停の期日、時間は限られています。調停期日ごとに解決すべき争点について財産分与、慰謝料、養育費などの解決すべき課題を明確にしておきましょう。
また、解決をするためには、証拠資料が必要となってきます。必要な資料を離婚調停期日までに収集をしておくとよいでしょ。
② 家庭裁判所調査官の調査に協力を行っていく
家庭裁判所では、親権を定める場合には、家庭裁判所調査官の調査となり、両親、子どもからの聞き取りなどが行われます。場合によっては家庭訪問などがなされるため、非協力的な者であり子の福祉に反しないといわれないためにも家庭裁判所の調査には協力を行っていくこととなるでしょう。
③ なすべき法的な主張については、書面できちんと行っていく
調停とは当事者での話し合いであり、話し合いでまとめることができれば問題ありません。しかし、実際には、財産分与、養育費、親権など法的争点にかかわる部分では法律上の判断基準に従って妥当な結論が出されていくことになります。そこで、法的な主張に沿った書面を提出することで、調停員や調停委員会を構成する裁判官にこちらの意見を採用していくべきことを書面で説得していくことが大切でしょう。
④ 調停条項をまとめていく
調停での話し合いを行いまとまっていくと話し合いの内容を調停条項にまとめていくこととなります。もっとも意見を十分に反映した調停条項を作成していくためには、きちんとした調停条項をまとめていくことが大切となるでしょう。面会交流、間接強制などを将来の履行確保を行う調停条項を行っていくとよいでしょう。
⑤ 話し合いにおいては優先順位を定めておく
調停ではあくまで話し合いであり、お互いに譲歩をしながら成立していくこととなります。優先順位を決めてどの条件は譲れないのか、どの条件は受け入れられるのかを定めて交渉を進めていくこととなります。
(3)調停離婚で弁護士に依頼してできること
弁護士に依頼を行うことで、調停における主張書面、証拠資料の提出などを行っていきます。家庭裁判所調査官の調査の対応や調停条項の作成など弁護士に調停離婚に向けて準を行っていくとよいでしょう。調停においては将来の履行確保を用意しておくことが大切です。また、調停離婚では、調停委員に対して主張を伝えていくことになります。弁護士と相談をしながら、どのようなことを話すか、どのような主張を行っていくかなどを調停を有利に進めていく上でのおおきな手助けとなるでしょう。
4 審判離婚について
(1)審判離婚が利用されるケース
審判離婚については、調停離婚が成立しなかった場合に、家庭裁判所は、調停に代わる審判を行うことができ離婚が成立する場合があります。
② 離婚をすることには争いがなく、財産分与や親権などをわずかな差であった場合
③ 故意に調停期日に出頭をしない場合
などの場合には、家庭裁判所が審判を出すことがあり得ます。
(2)審判離婚の流れ
調停に代わる審判については、家庭裁判所が相当と認める場合に行われるものです。
もっとも、家庭裁判所の審判が出されてから2週間以内に、審判に対する異議申立てを行うことができるため、あまり利用されていない制度となります。
5 裁判離婚について
(1)裁判離婚の流れ
裁判離婚を行うためには、裁判所に対して訴状を提出し、離婚の訴えを行うこととなります。
訴状の送達がなされ、第1回期日が指定されます。第1回口頭弁論期日では、訴状、答弁書を陳述し、書証の取調べなどがなされます。
第2回期日以降には、弁論準備手続期日、準備的口頭弁論、書面による準備手続などがとられ、準備書面を提出します。証拠調べ手続きでは、書証の提出などが行われます。また、案件によっては家庭裁判所調査官により事実の調査がなされていくこととなります。
裁判所での審理が尽くされた段階で和解期日が設けられることも多いでしょう。和解が成立しないには、陳述書を提出し、当事者尋問、証人尋問の期日が設けられることとなるでしょう。
なお、離婚訴訟では、調停が前置していなければならないという調停前置主義が取られており、訴訟は調停に付されることがあり得ます。附帯請求として、財産分与、親権者指定、養育費請求、損害賠償請求などがなされることがあるでしょう。
(2)裁判離婚の進め方
離婚訴訟では、離婚原因の有無が判断の材料となります。
離婚原因には、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと、その他婚姻を継続し難い重大な事由を判断できる証拠を提出することが必要となります。訴訟においては、離婚原因については、証拠による立証が必要となります。
また、有責配偶者からの離婚請求である場合には、原則としては信義誠実に反するとして離婚請求が認められないと考えられます。もっとも、最高裁昭和62年9月2日判決では、①夫婦の別居が朗当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること、②当事者の間に未成熟子がいないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に極めて苛酷な状況に置かれるなど、離婚請求を認容することが社会正義に反するという特段の事情が認められないことを踏まえ、有責配偶者からの離婚請求でも認められる場合がありますので、証拠により立証が必要となってくるでしょう。
財産分与、養育費についても、判断をするに足りるだけの主張立証を行っていかなければならないこととなるでしょう。
離婚事件のうち有責性や破綻お有無が問題となっている事案などでは一般良識に基づく評価・判断がふさわしいとして参与員が指定され、証拠調べ手続きへの立会いや和解の試みへの立会いが行われることがあります。
(3)和解
離婚訴訟においても訴訟上の和解を成立させることができます。また、協議離婚をすることを合意し、協議離婚届を提出するとの和解を行い、戸籍法上は協議離婚で処理をする和解もあり得るでしょう。もっとも、協議離婚をすることに合意をするとのものであれば、履行確保ができない可能性があるため、付調停によることもありえるでしょう。和解の成立においては、身分行為であるため、本人の出頭が必要となるでしょう。
(4)尋問手続き
離婚訴訟では、離婚原因などは家庭内の出来事であるため、陳述書、尋問手続を行うことで内容を確認することとなります。尋問期日については、公開の裁判で行われることが原則となります。尋問期日においては、それぞれの代理人、裁判官から質問を受け、回答を行っていくことなります。
なお、尋問期日を非公開とすることができないかを確認されることがありますが、裁判の公開は憲法上の要請であるため、非公開となるのは極めて例外的な場合となります。身分関係に関するものであるため裁判を公開を困難とする真にやむを得ない事情があり、裁判を公開することによって適正な身分関係の形成または存否の確認が行われないおそれがあると認められる場合には、公序を害するおそれがあるとして、非公開とできる場合はあり得ます。例えば、長期間にわたり異常な性生活を強いられ、公開法廷で陳述するような場合などが想定されるでしょう。
(5)判決・判決によらない終了の場合
離婚訴訟は附帯処分等とは共に判決にて出されることが多いでしょう。財産分与、親権などについても同時に判断がなされるため不服がある場合には、判決に対する不服申立てを行うこととなります。判決内容に不服がある場合には、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴を提起することとなります。
なお、和解を行うなどして、判決によらず婚姻が終了した場合においても、附帯処分については引き続き審理・判断がなされることとなります。
(6)裁判離婚は弁護士に依頼を
離婚訴訟については、通常訴訟とも流れが異なり、訴訟の提起、追行については本人のみでは非常に困難なことになります。離婚原因の主張立証、財産分与、慰謝料、養育費などについて適切な判断を行うためにも、裁判離婚については弁護士に依頼をされることをおすすめいたします。
6 まとめ
離婚事件については、協議離婚、調停離婚で終了するケースがほとんどであり、裁判離婚には至らないことが多いでしょう。できるだけ早い段階で協議離婚・調停離婚を行い、将来の履行可能な条項を定めていくとよいでしょう。どうしても離婚訴訟にいたった場合には長期間の対応が必要となりますので、信頼できる弁護士に依頼をされることをお勧めいたします。天王寺総合法律事務所では、浮気・不倫に伴う離婚事件を経験した弁護士が所属しておりますので、適切な解決に導いていくことができるでしょう。浮気・不倫に伴う離婚請求でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。