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途中から既婚者であることを知った場合の責任は?

途中で既婚者であると知った場合

交際をはじめたときには、相手が結婚していることを知らずに関係をもっていたら、途中から既婚者であることが判明することがあります。

このような場合にも配偶者にばれてしまった場合には、不倫慰謝料の請求を受けてしますのでしょうか。

この記事では、途中から既婚者であったことを知った場合に、不貞行為に基づく損害賠償請求を負わなければならないのかについて解説させていただきます。

交際をはじめてから、既婚者であることを知りました。このようば場合でも不貞慰謝料を請求されてしまうのでしょうか。

弁護士の回答

既婚者であることを知らずに、知らないことに過失がない場合には、不貞行為に及んだ場合には、損害賠償責任を負わないこととなります。

一方で、既婚者であることを知りながらなお関係を続けていた場合には、慰謝料の支払義務が発生する危険性があります。

いつの時点から知っていたかが争点となることがありますので、証拠を残しておくことが大切となるでしょう。


1 過失責任の原則とは

まず、不倫慰謝料での加害行為とは、不貞行為をいいます。

いかなるものが不貞行為となるのかには考え方がありますが、配偶者以外の者との性的関係、いわゆる肉体関係と解されることが多いでしょう。

肉体関係がないとしても、夫婦婚姻生活の平穏を害する程度の行為、例えば別居して同棲に至る場合や性交類似行為などは加害行為と判断されることがあります。

一方で、いかなる場合に慰謝料を支払わなければならないのかについては、配偶者と不貞行為(肉体関係・性的関係)をもった結果のみをもって、慰謝料の支払義務を負わなければならないのではありません。

なぜ配偶者と肉体関係をもったのに慰謝料の支払いをしなくてよい場合があるのかと疑問に思われる方もおられるかもしれませんが、これは相手方が結婚していることを知らないし、認識することもできない状況であった場合には、結果のみをもって損害賠償責任を負わせることができないとの過失責任の考え方に基づくものです。

そもそも日本の民法では、不法行為に基づく損害賠償責任を負うのは、加害者に故意または過失がある場合に限られています。

これを過失責任の原則といいます。

なぜこのような故意や過失が必要とされているのかというと、日常生活の中で合理的な注意をしていたのに行動をしたにもかかわらず、結果に責任を負わされるとなると、社会における自由な行動が制約されるおそれがあるためです。

そのため、民法では過失責任の原則として、加害者に故意・過失があった場合にはじめて不法行為に損害賠償責任を負うと考えられています。

実際の民法709条の規定においても、 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めがされています。

したがって、既婚者であることを知らず(故意がない場合)、一般人の注意義務をもってしても知ることができない場合(過失がない場合)には、損害賠償責任は負わないことになります。

 

故意とは 結果の発生を認識・認容していた場合をいいます。

 

これは、結果が発生することを確実に意欲していることまでは必要ないとされておりますので、不貞行為という加害行為によって夫婦婚姻生活の平穏が害されることを確実に意欲することまでは不要であり、不貞行為時点において配偶者がいることを知っている程度があれば足りるでしょう。

過失とは 結果発生の予見可能性がありながれ、結果の発生を回避するために必要とされる措置・行為を講じなかったことをいいます。

 

過失の対象としては、基本的には配偶者がいることについて予見可能性があったのかどうかが問題となることが多いでしょう。

 

一般人の注意義務をもって観察をした場合には、配偶者がいることを容易に認識しえるにもかかわらず、不貞行為に及んだ場合には、過失があると判断されることがあるでしょう。

 

 

なお、被害者側としてはやや厳しい部分がありますが、不法行為に基づく損害賠償が裁判となった場合には、被害者側において、加害者に過失があったとの評価を根拠づける基本的な事実の主張・立証について負っています。

2 途中から既婚者であることを知った場合は?

 

実際の不貞行為に基づく損害賠償請求の事件では、故意・過失が問題となることはよくあります。

そして、当初は既婚者であることは知らず交際関係に至っていたとの事案は存在します。

では、このような場合にはどのような判断がなされるのでしょうか。

法解釈の部分と実際の立証・裁判の場面から検討していきましょう。

(1)法解釈として

 

法解釈としては、不貞行為の時点で、配偶者がいることに故意、過失がない場合には、損害賠償責任は負いません。

したがって、既婚者であることが判明した時点で、不貞行為をしなかった場合には、不法行為に基づく損害賠償責任は負わないこととなります。

一方で、婚姻関係の事実を知ったのちにも交際関係、不貞行為を継続した場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことなります。

婚姻関係を認識した時点がどこなのかが問題となってくるでしょう。
東京地方裁判所平成24年12月27日判決

(2)実際の立証・裁判として

 

婚姻関係を認識した時点や認識することができた時点がいつであるのかは実際の裁判としては問題となります。

故意、過失については、心の中の問題のようにも思えるため、認めなければ故意、過失がないといえるのかというとそうではありません。

客観的な事情を見ることによって、通常は、認識していたといえるかどうか、一般人ならば配偶者がいることを認識しうる状態であったかどうかといった観点から判断がなされることとなります。

① 同じ会社、職場で長期間勤務があること

② 同じ地域で生活をしている、同じ自治会に入っている

③ 子どもがいることを知っていること

④ メッセージやLINEなどのアプリで子どもや配偶者のことに対する言及があること

⑤ 交際中の会える日時が限られており、家族がいることが想定できること

⑥ 配偶者が家族がいることを伝えていたとの自白

⑦ SNS上での家族がいる旨の記載内容

などの事情があると、結婚していることを知らないといった主張をしたとしても、配偶者がいるのではないかとの認識があった事情のひとつとされるでしょう。

一方で、出会い系アプリにおいて単発で会った場合や未婚者であることが前提とされる婚活パーティーで知り合った場合には、既婚者であったことを知らない方向に傾く事情といえます。

独身であると偽られていたことの証拠が提出できる場合には、故意、過失を否定する方向の事実となるでしょう。

(3)裁判例

 

東京地方裁判所平成24年12月27日判決では、離婚して籍は抜いていると騙して交際を始めた事案において、ネットで調べるなどしているが違法性がないか確認している時点で、法的な問題が存する可能性があるとの認識を抱いていたというべきであるし、ウェブサイト等で情報を集めたとはいえ、婚姻関係にある一方の配偶者と交際した場合において、具体的な事実関係の検討を経ずに不貞行為に該当せず違法性がないと判断することは困難であって、違法でないと軽信したに過ぎず、免責されるものではないとして、配偶者がいることを知らずに交際に入ったとしても婚姻関係を認識したのちに免責されると誤信していても損害賠償責任を免れることはなく、婚姻関係を知った日以降の交際については不法行為責任を認めるといった事案が存在します。

したがって、婚姻関係を知った日以後には、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があるといえるでしょう。

故意、過失の証拠がない場合には、慰謝料請求はできないとしても、通知書、警告書を送付し、これ以上の交際を続けていた場合には、不貞行為に基づく損害賠償請求がなされることを告知して、交際関係を断つように求め、配偶者に対する損害賠償請求、離婚などを検討していくといった対応を取ることになるでしょう。

もし相手方が、配偶者であることを知りながら、なお交際に及んでいた場合には、不貞行為に基づく損害賠償請求を受けることになるでしょう。

したがって、、周辺の基本的事実関係から故意、過失があるといえるのかを弁護士と相談をされることをオススメ致します。

3 婚姻関係を知らなかった場合に貞操権違反による損害賠償が考えられるか

 

なお、婚姻関係を知らせずに性的関係に至った者に対して関係を持ってしまった側から損害賠償請求をすることができるのかも検討しておきましょう。

独身であると虚偽を告げられた交際をしていた場合には、騙されていたとして、貞操権侵害などに基づく慰謝料請求が検討できる場合はありえます。

貞操権とは、性的な自由に不当な干渉を受けない権利をいいます。

そして、故意、過失をもって以下のような権利侵害をした場合には、貞操権、人格権を侵害していたものとして損害賠償責任を負うことがあるでしょう。

① 既婚者であることを知っていたら性的な関係には入らなかったといえる場合には、貞操権を侵害したといえる場合

② 今後は結婚することを約束して性的な関係に入ったのに婚約を不当に破棄する場合

などがあります。

もっとも、婚姻関係を知らずに交際をしていたからといって常に損害賠償責任が発生するわけではではありません。

性的関係をもつかどうかの自由が侵害されるレベルであるかどうか、性的関係をもつにいたる動機として既婚者であるか否かが重要な意味合いをもっていること、既婚者であることを知っていれば性的関係を持つことがないといえる程度の事情は必要となるでしょう。

違法性や悪質性が認められやすい要素としては

① 結婚を約束していることの証拠が出せる場合

② 妊娠をさせている場合

③ 未成年者の無知、不十分な判断能力を利用している場合

などは、違法性が認められやすいこととなります。

一方で、結婚や既婚者であることがそれほど重視されているわけではなく、成熟した成人であった場合には、なかなか貞操権侵害などが問題となるケースは少ないでしょう。

貞操権侵害に基づく慰謝料としては数十万円から数百万円など幅があります。

4 まとめ

 

途中から既婚者であることを知った場合の責任としては、配偶者がいることを知らず、一般人の注意義務をもっても婚姻関係があることを予見できない場合には、その間に、性的関係をもったとしても不貞行為に基づく損害賠償責任を直ちに負うものではありません。

既婚者であることを偽れて性的意思決定を侵害されていた場合や婚約することを約束されていた場合には、逆に、貞操権侵害、人格権侵害を理由として慰謝料請求が検討できる場合があるでしょう。

一方で、既婚者であると知ってもなお、性的関係、交際関係を継続した場合には、不貞行為ないし婚姻関係の平穏を害する行為をしているとして、故意、過失も存在し、不貞行為に基づく損害賠償請求を受けるおそれがあります。

もっとも、金額面では、知るに至った事情により変化してくることがあるでしょう。

不貞行為に基づく慰謝料請求において、きちんとした金額交渉、裁判を争っていかなければならない場合には、不倫慰謝料事件に強い弁護士にご相談ください。

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著者情報

山本 達也

(天王寺総合法律事務所 代表弁護士)

大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。弁護士事務所のHPはこちら。

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