浮気・不倫慰謝料の獲得金額相場
浮気、不倫の慰謝料請求を行うとして実際にはいくら獲得できるのでしょうか。
不貞行為に基づく慰謝料請求として、概ね100~200万円程度となることが多いでしょう。
もっとも、事案の内容などにより、50~100万円、200~300万円が認められることがあるため、獲得金額には幅があるというのが実情です。
また、配偶者に対する離婚慰謝料を行う場合には、離婚原因に対する不法行為が考慮されるために、100~500万円と幅広い慰謝料金額となることがあります。
したがって、浮気、不倫慰謝料の獲得金額については事案ごとに定まるため、弁護士とよく相談して請求をしていきましょう。
1 慰謝料とは何か
(1)慰謝料とは何か
慰謝料とは、被害者に生じた精神的苦痛を補填するものであり、その金額は精神的損害の大きさによって変わることとなります。
浮気相手と浮気を行った配偶者は、不貞行為という不法行為を行った者として、不法行為に基づく損害賠償責任を負い、精神的苦痛に対する損害を賠償しなければならないことになります。
損害賠償制度の目的は、あくまで損害の回復、補填にあるため、反社会的、違法な行為を行ったとしても懲罰的に高額の損害賠償が認められるものではなく、被害の程度、加害者、被害者双方の年齢、学歴、職業、収入、社会的地位といった事情や、不法行為の動機、経過などを多岐にわたり、損害額を算定し、それを補填するという形で行われます。
実際の裁判では、裁判官が口頭弁論に現れた一切の事情を斟酌して裁量によって事案に相応しい慰謝料金額を算定することになるでしょう。
(2)慰謝料を高くするための要素は何か。
不貞行為に基づく慰謝料が高額がする理由としては、①不貞行為の期間が長いこと、②不貞行為の悪質性が高いこと、③不貞行為により婚姻関係を破綻に導いていること、④婚姻期間が長いこと、⑤被害者に何らの落ち度がないこと、⑥被害者が病気となる、仕事に支障が生じるなど損害が大きいことなどがあるでしょう。また、欠席判決となった事案や任意交渉段階の合意により高額の慰謝料支払いに合意をした場合には、高額な支払いが認容されることがあります。
・婚姻期間が44年、不貞期間が17年、離婚を求められたためにうつ病に罹患したこと、自宅を追われた、高齢の専業主婦などであったとの事情により、440万円の慰謝料が認容された事例(東京地判平成29年11月7日判決)。
・婚姻期間が24年、不貞期間が9年半、交際が発覚した後一旦関係を解消するも交際を再開した、会社名義マンションを購入し、浮気相手と同居し、子どもが生まれたこと、現在も交際を続けている等の事情により、300万円の慰謝料が認容された事例(東京地裁平成28年4月6日判決)。
・婚姻期間が8年程度、不貞期間が3年4か月、被害者に何らの落ち度があったことが伺われないこと、不倫をやめるように申し入れたものの、不倫をやめることに応じないこと、不貞行為が原因で離婚したこと、家族で住む家の計画がとん挫したこと、病気を患ったことなどから、慰謝料330万円が認容された事例(東京地裁平成30年4月12日判決)。
・婚姻期間が2年4か月、不貞回数が1回であっても、慰謝料500万円を支払う旨を記載し、署名押印した場合をしていた場合には、暴利行為には当たらないとして、合意の拘束力が認められ、未払の450万円の支払いが認められた和解請求事例(東京地判平成29年9月27日判決)。
・内縁の妻と内縁の夫において、二度と不貞行為を行わないと誓約し、再び不貞行為を行った場合には、妻に500万円、子に200万円を支払う旨を手書きで記載し、押印した誓約書が存在したものについては妻からの500万円請求が認容された和解請求事例(東京地裁平成29年10月17日判決)。
2 慰謝料の相場
(1)離婚に至っている場合 100~500万円程度
・浮気配偶者に対する離婚慰謝料 100~500万円
不貞行為によって夫婦関係が破綻に至った場合には、損害賠償金として高額となる傾向があります。不貞行為によって円満であった婚姻関係が破綻したなど、以前の婚姻関係がどのようなものであったのか、不貞行為があったのち婚姻関係がどのように変動したのかによって変わるでしょう。離婚に至った場合には、別居や同居の場合に比べて損害が大きいものとして慰謝料の金額は上がっていくこととなるでしょう。
浮気慰謝料と離婚慰謝料の関係
不貞慰謝料は不貞行為に基づく損害賠償金であるのに対し、離婚慰謝料は、離婚原因に不法行為が存在するために請求できる慰謝料です。離婚慰謝料は、有責の配偶者に対して認められるため、有責原因が不貞行為の場合には不貞慰謝料と被る部分があるものの、他の理由が考慮されることもあるため、離婚慰謝料のほうが高額化の傾向があります。
浮気した配偶者に対する離婚慰謝料として請求する場合には、婚姻関係が長期間が33年と長期間に及び、不貞行為を中止するよう要求があったにも関わらず継続していたことから離婚慰謝料として500万円、うわき相手に対する不貞慰謝料として300万円を認容する事例も存在します(仙台地裁平成13年3月22日判決)。
なお、浮気相手に対して離婚に伴う慰謝料請求が認められるのは、不倫相手が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図して、その婚姻関係に対する不当な干渉をする等として当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がある場合に限られるため、浮気、不倫相手に対しては離婚慰謝料を請求できる場合は限られた範囲となるでしょう(最高裁平成31年2月19日判決)。
(2)別居に至っている場合 100~200万円程度
婚姻関係の悪化の程度が別居に至っている場合には、同居など婚姻関係に客観的な影響がみられない場合に比べて、高くなる印象があるでしょう。これは、別居は夫婦共同生活の破綻を招いている事態と評価することができるからでしょう。
(3)同居を継続している場合 50~150万円程度
婚姻関係について同居の場合には夫婦婚姻生活に与えた影響が少ないとして損害賠償金として大きな金額となりにくい場合があります。婚姻関係が未だ破綻していないとの事情は、発生した損害の程度が低いとの考え方が成り立つためといえるでしょ。
また、同居の案件では、浮気配偶者に対する慰謝料請求が特有財産から支払われない場合には家庭内での財産移転に過ぎないとして請求が行われないことがあります。浮気配偶者に対しては同居、婚姻生活を送るとの観点から慰謝料請求をせず、浮気相手のみに請求している事案については、裁判所は、不貞行為については第一次的責任を負うべきは浮気配偶者であり、第三者である浮気相手に対する慰謝料のみを請求することが不均衡であるといった考え方を取る場合があります。このような事情から、同居を継続している場合にはやや慰謝料の金額が低額化するケースがあり得ます。
慰謝料を請求する場合には、同居をしていたとしても、発生した損害の程度、精神的苦痛が大きいことを主張していくこととなるでしょう。
(4)不貞類似行為の場合 30~50万円程度
不貞行為とは、配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことと考えるのであれば、あくまで不貞行為とは性的関係、肉体関係を指すであると考えられます。
キスやハグといった行為も、夫婦共同生活の破綻に至らせる危険性がある行為や不貞類似行為といえることはあるでしょう。もっとも、肉体関係が認められる場合に比べて慰謝料の金額は低額となるケースが多いでしょう。
3 慰謝料の増額の際に必要な証拠
(1)不貞行為の立証をしっかりと行う
不貞行為の期間、内容の立証はより詳細にできることで、慰謝料請求の金額は高額となるでしょう。これは、不貞行為の期間、内容を立証できることで、悪質性などの立証が容易となるためです。
不貞行為の期間については、立証に困難が伴う場合があります。ある時点での肉体関係、性的関係は立証できるものの、他の部分については交際が継続していたために推論によらなければならない場合があるためです。
また、不貞行為の内容としてどちらが主体的に行動をしていたのか、どの時点で配偶者がいることを知り、配偶者から浮気をやめるよう求められたのになお不貞行為を継続したとの事実があった場合には、これらの経緯を悪質性として主張することがありでしょう。
不貞行為の立証ができず、不貞類似行為にとどまる場合には、損害賠償金額としては低額となる傾向があります。
したがって、継続的不法行為ではあるものの、どの時点、どのような経緯で、どのような内容の不法行為を行ったことを立証していくことが慰謝料の増額において大切な要素となるでしょう。
(2)増額要素があるのかを確認し、立証を行っていく
慰謝料の増額理由である要素について主張立証を行っていくことで慰謝料の増額を目指していくことが考えられます。
① 婚姻期間が長期間であること、婚姻期間に特段の問題がないこと、円満であったこと
婚姻期間については戸籍謄本などにより客観的に期間を認定することができます。
家族旅行などのイベント、子どもの出産など写真や日記などにより婚姻関係が円満で特段の問題がなかった状態において、不貞行為により破綻していたことを立証していくことがありえるでしょう。
② 未成熟の子が存在すること、不貞行為により子どもに与えた影響
子どもは浮気相手や浮気配偶者に対して不貞行為に基づく損害賠償請求を行うことはできないため、直ちに慰謝料の増額理由とできるかには争いがあるでしょう。
もっとも、不貞行為により離婚に至り、未成熟の子を1人で育てなければならない状況に至ったことや未成熟の子に対して不貞行為が心身の発達、うつ病などの具体的事情が生じている場合には、夫婦婚姻生活に与えた影響があるとして慰謝料の増額理由として主張することがあり得るでしょう。不貞行為が子どもにどのような影響を与えたのかの陳述書や診断書などを立証で用いることがあり得るでしょう。
③ 浮気配偶者、浮気相手の悪質性
不貞行為を行った浮気相手であるにも関わらず、一方的かつ執拗に離婚を求めるなど夫婦婚姻関係の破綻を勧めた事情、離婚をさせようと指示を行っていた事情は悪質性を基礎づけるものと考えられます。
また、不合理な否認、弁解を行っていたこと、虚偽の事実の回答を行っていたことはなどは悪質性を基礎づける事実のひとつといえるでしょう。交渉経過やメッセージのやりとりかた悪質性を立証していくこととなるでしょう。
④ 浮気配偶者と浮気相手との間に子どもが生まれたこと
浮気配偶者と浮気相手との間に子どもが生まれたことや堕胎したことなどは不貞行為の悪質性を基礎づける事情といえるでしょう。
浮気相手が認知を求めた結果、戸籍謄本の記載、人工妊娠中絶に対する同意書の写しなどにより立証していくことがあり得るでしょう。
4 相手方に資力がない場合の対応方法
(1) 分割支払での合意を目指す
相手方に資力がないとの話がなされても資金を集めていくことができないのか、財産や資産、家計収支から現実に支払いができる金額を聞き取ることになってきます。銀行などからの貸金を受けることで支払いを受けることができる場合には、相手方に提案を行っていくことがあるでしょう。
しかし、金融機関の審査が通らない場合や相手方に資力がない場合には、一括での支払いを受けることは困難であることがあります。財産開示や家計収支を受けても現実に資力がない場合には、分割支払いを求めていくこととなるでしょう。これは給与債権であっても生活保障の観点から、原則1/4までの差押えしか認められておらず、資力がない者から一括で支払いを受けることができない場合には強制執行段階においても分割支払を受けることとなります。
分割支払にて定期的に支払える金額を定めていくこととなるでしょう。公正証書にて執行認諾文言を入れる、総額を増やし、全額の履行があった場合に一部を免除するなど支払いを確保する条項を設けることがあり得ます。
したがって、分割支払であっても支払いを継続できる形での支払いを確保していくことが大切となります。
(2) 共同不法行為者に対する請求を行う
浮気相手において、慰謝料の支払い資力がない場合にはどのようになるのでしょうか。
不貞行為に基づく慰謝料請求権は、共同不法行為に該当し、共同不法行為者間で不真正連帯債務を負うこととなります。そのため、一方の支払いができない場合には、もう一方に対しての全額の請求を求めていくこととなるでしょう。
同居をしている場合に請求ができないなどの事情がある場合には、将来離婚に至った場合には財産分与や慰謝料として受け取る金額を合意するなど将来の履行確保を取っておくこともあり得るでしょう。
(3)使用者責任や親に対する不法行為責任を追及はできない
不貞行為は社内不倫であったとしても、会社の業務執行に関連して行われることが通常想定できず、プライベートの出来事であるため、会社に法的責任が生じるとすることは困難でしょう。したがって、使用者責任(民法715条)を追及することはできません。
また、親に対して支払えと請求も親自身には不法行為が成立しないため、請求を行うことはできません。不倫をしたのは当事者の問題であるためです。未成年者が不倫を行ったとしても原則は責任無能力者には当たらず、民法714条の請求は困難でしょう。加害者である未成年者が責任能力を有する者でも、監督者の監督義務違反と損害との間に相当因果関係が認められる場合には、監護義務者について民法709条責任を追及できる場合がありますが(最判昭和49年3月22日)、不貞行為の事案において監督義務違反により不貞行為が生じたとの事例はほとんど考えられないため、独自の責任追及は困難でしょう。
(4) 連帯保証契約を締結は合意ができたのみ可能、債権者にも義務がある点に注意が必要
浮気慰謝料について連帯保証人を立てなければ和解をしないといった交渉を行うこともありえます。連帯保証人については、あくまで連帯保証契約を締結する意思が得られたときにできるもので、当事者が拒否した場合には締結はできません。
分割和解を受けるためには、不払いとなった場合に第三者を連帯保証人をたて債務を負ってもらうとの場合です。当事者で合意を行った場合に主債務者と同等の責任を負う契約を締結し、連帯保証人となることができます。もっとも、民法改正により連帯保証人契約を締結するにしても、保証契約締結時の情報提供義務、主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務、主債務者の履行状況に関する情報提供義務を果たすことが前提となります。主債務者は、①財産及び収支の状況、②主債務以外の債務の有無、その債務の額、その債務の履行状況、③担保として提供するものがあればその内容といったことが必要となり、債権者が情報提供がされなかったことを知りまたは知ることができたときには、保証契約が取り消されることがあるため締結に当たって注意が必要となります。
また、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対して喪失を知った時から2か月以内に通知をしなかったときは、期限の利益が喪失されたときからその後に通知するまでに生じた遅延損害金を保証人に請求することができない、主債務者の履行状況に関して情報を提供しなければならないなど債権者の義務も増えていくことに注意が必要となります。
5 まとめ
浮気、不倫の慰謝料については、獲得金額相場について一定の幅があるものの多くの案件で100~200万円程度となる案件が多いでしょう。任意交渉で合意ができる場合にはより高い金額で認められる場合や増額要素を立証していくことでより高い金額の獲得を目指すことができます。それぞれの事案に沿った事情を丁寧に主張、立証していくことで獲得金額をより上げていくことになるでしょう。天王寺総合法律事務所では、不貞行為慰謝料事件について数多くの請求案件を取り扱った弁護士が所属しておりますので、浮気慰謝料について弁護士をご依頼されたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。