夫に慰謝料請求したい
- 夫(妻)に浮気が発覚したのでどうすればよいのかわからない。
- 夫(妻)が浮気をしているので慰謝料を請求したい
- 離婚をせずに慰謝料請求のみを行うことはできるのか
配偶者に浮気、不倫が発覚した場合には大きなショックを受けているおられる方のお話をよくお聞きします。配偶者の浮気、不倫では今後の夫婦生活をどのようにするのか、離婚となってしまうのか、慰謝料のみを請求できるのかなど様々な悩みを抱えらえることでしょう。このページでは主として慰謝料請求はできるのか、離婚をする場合に考えるべきこと、離婚と慰謝料請求を行っていくパターンを解説させていただきます。
1 はじめに
浮気、不倫を解決していく流れとして下記の流れを考えておきましょう。
① 浮気、不倫が発覚した場合には、まず不貞行為の証拠を確保することが大切です。
後々、紛争となった際に証拠がなければ打てるべき手を打つことができなくなってしまいます。
② 浮気、不倫について自分の中でどんな気持ちを持っているのかを整理していきましょう。
場合によっては、夫婦カウンセラーなどを利用し、自分がどうしたいのかの心の整理をしていきましょう。治療が必要な場合には、心の治療を行うことも大切です。
③ 心の整理をしつつ、どのようなアクションを起こすのかを考えていきましょう。
行動を起こすことで心を整理し、状況を改善することができる場合があります。
また、法的にみても損害および加害者を知ってから3年以内に行動しなければ損害賠償を請求できない場合があり得ます。勇気をもって法律事務所にどうしたいのか、どうしていく方法があるのかを相談していきましょう。
浮気相手に対するアクションと配偶者に対するアクションが考えられます。
浮気相手に対するもの
・浮気相手に対して慰謝料請求を行うか
→ 不貞行為慰謝料請求
・浮気相手に対して浮気をやめるよう働きかけを行うか
→ 慰謝料請求と合わせて接触禁止合意などの要求
浮気配偶者に対するもの
・浮気配偶者に対して慰謝料請求を行うか
同居、別居の場合 → 不貞行為慰謝料請求
離婚の場合 → 離婚慰謝料請求
・浮気配偶者に対して浮気をやめるよう働きかけを行う
→ 慰謝料を請求せず、接触近世条項などの合意書を作成する
→ 慰謝料を請求しつつ、接触禁止条項などの合意書を作成する
・浮気配偶者と同居 or 別居 or 離婚のいずれを選択する
→ 誓約書、別居合意書、離婚協議書など条件を定めるかどうか
④ 自分自身の今後の希望と経済的利益を踏まえ、方針を決めて、弁護士に依頼するなどして行動を起こしていきましょう。
2 浮気・不倫で配偶者に慰謝料請求ができる場合
不貞行為とは、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、性的関係、肉体関係があったことが必要です。そこで、配偶者が第三者との不貞行為を行ったかどうかを立証をできるかで判断することとなるでしょう。
不貞行為の証拠として、ラブホテルを利用した写真、動画、クレジットカードの利用履歴、LINEやメールなどのメッセージで肉体関係を持っていることが伺われるか、ホテルを利用した履歴があるかどうかといったことが証拠として考えられます。
女性と浮気していることは確かなのですが、どこのだれと行っているかまでは特定できていません。このような場合には配偶者に対する慰謝料請求もできないのでしょうか。
不貞行為では、配偶者以外の者と性的関係を結んでいたことを立証できればよいため、浮気相手がどこのだれかまでかを特定する必要はありません。
浮気相手に対して誰であるのかを特定できていなかったとしても配偶者以外の第三者と肉体関係、性的関係を持っていたことを立証できれば、不貞行為に基づく損害賠償請求を行うことがあり得るでしょう。
風俗利用の場合には不貞行為といえるのでしょうか。
風俗利用の場合に、不貞行為と認められるかには争いがあります。風俗は金銭を支払うことで性的サービスの提供を行うもので、夫婦婚姻関係を破綻に至らしめるものといえないとして不貞行為といえないことがあり得るでしょう。もっとも、風俗を利用の態様、程度によっては、貞操義務に違反するとして一定額の慰謝料支払義務が認められることがあるでしょう。また、風俗利用を超えて交際に至っている場合には、不貞行為と判断されることがあり得ます。離婚原因となるまでは争いがあるため、弁護士に確認するとよいでしょう。
3 配偶者への離婚慰謝料請求ができる場合
不貞行為があったとして、民法770条の離婚原因として、離婚を求めていくことができます。離婚原因が不法行為に該当する場合には、離婚慰謝料を請求することが考えられます。
(1)配偶者以外の者との肉体関係
離婚原因として、不貞行為があった場合には、離婚慰謝料を請求できる場合があるでしょう。婚姻期間の流れ、不貞行為の内容、期間、悪質性、未成熟の子の有無などにより不貞行為の慰謝料は変わってくることとなるでしょう。
(2)暴行行為(ドメスティックバイオレンス)
配偶者からの身体に対する暴力、それに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動により子人関係が破綻した場合には婚姻を継続し難い重大な事由が存在するとして、離婚原因に不法行為として離婚慰謝料の原因となるでしょう。暴行行為には様々なものがあるため、損害賠償金額して50~300万円といった幅のある算定となるでしょう。
(3)離婚慰謝料の金額、不貞慰謝料との関係性
離婚慰謝料としては、100~500万円の金額が算定されることとなるでしょう。
離婚慰謝料と不貞慰謝料は厳密には別の概念です。
離婚慰謝料は、離婚原因に不法行為に基づく損害賠償請求権が成立する場合をいいます。離婚原因に不貞行為という有責性がある場合に慰謝料請求ができることとなります。
不貞慰謝料は、不貞行為に基づく損害賠償請求権が成立する場合に請求できるものです。
法的概念としては、離婚慰謝料と不貞慰謝料は別概念です。
しかし、離婚慰謝料には不貞行為があったことを含める算定する場合や不倫慰謝料に婚姻関係破綻があったことを含めて算定するなどの方法によりどちらかに含まれるとして算定されることとなるでしょう。
(4)離婚慰謝料は原則として浮気相手には請求できない
不貞慰謝料については、不貞行為に基づく損害賠償請求権として浮気相手に対しても請求をすることができます。
一方で、離婚慰謝料については、不倫相手に対しては、特段の事情がない限り請求ができないことが示されています。最高裁平成31年2月19日判決では、離婚による婚姻の解消は、本来は、当該夫婦の間で決められるべき事柄であると述べ、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、これを理由とする不法行為責任を負わないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦に一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして、夫婦を離婚をやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるとの判断がなされています。
4 離婚をするかどうかの検討
浮気、不倫の慰謝料請求は、仮に離婚をしない場合にも配偶者に対する請求を行うことはできます。もっとも、今後も夫婦生活を送っていくことができるかには様々な問題があるでそう。そこで、ここでは、離婚をする場合に考えるべきことを解説させていただきます。
(1)離婚後の生活設計
離婚を行う場合には、離婚後の生活設計を立てることとなります。
どこを生活拠点として暮らしていくのか、家計収支表を作成し、1か月に必要な支出と将来必要なお金から積み立てるべきお金の金額を定めるとよいでしょう。現在、仕事をしていない場合にはすぐに収入を得ることが難しい場合には、実家などの援助を受けられるかも確認しておきます。離婚後に受けられる公的援助制度も確認しておきましょう。
(2)親権・面会交流
誰が親権を取得するのかといったことも大きな考慮要素となります。親権については、主たる監護者、子どもを継続的にみている人物は誰か、子どもの意思はどうかといった観点から判断がなされます。
注意点としては、有責配偶者であるからといって親権を取得できなくなるといったわけではない点です。子どもの福祉、利益の観点から親権者としての不適格な事情があるかを検討しなければなりません。
親権者となった場合には、面会交流についてどのように応じるのかも問題となります。通常は1か月に1回程度の面会交流が認められることが多いため、どのように対応ができるかも考えておきましょう。
(3)財産分与の算定
離婚をした場合には、財産分与として夫婦共有財産を清算していくことなります。夫婦共有財産としていかなる財産があるのかを把握しておくことが大切となります。
・保険(保険の解約返戻金、学資保険なども対象となります。)
・不動産(不動産登記簿謄本、固定資産税評価額証明書、住宅ローンの残ローン額、住宅ローン契約書)
・退職金(会社に退職金制度があるかどうか)
・株式、有価証券(株式の数、種類、時価を把握しておきましょう)
・現金、動産
など夫婦婚姻期間に形成した財産を確認しておきましょう。婚姻中でなければ把握しずらい財産もあるため、離婚の話を出す前に資料を集めておきましょう。
(4)慰謝料の算定
離婚慰謝料については、様々な事項が算定の基礎となります。
離婚原因について不貞行為以外にどのようなものがあるのかを、それを立証する証拠があるのかを確認しておきましょう
悪意の遺棄とは、正当な理由なく、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務に違反する行為です。浮気相手と同棲をはじめ、同居義務や扶助義務を果たさないといった場合には、慰謝料の事由として考慮ができるでしょう。
・生活費の不払い
生活費を渡さず、経済的に虐待を行うといったことも慰謝料事実として考慮される場合があります。生活費を渡さないといった事情が発生した場合には早期に婚姻費用支払調停を申立て、法的に支払義務を発生させ、調停申立て前の過去分の婚姻費用を慰謝料や財産分与として請求することがあり得るでしょう。
・性交渉の拒否
性交渉の拒否について正当な理由がなく行われない場合には慰謝料の事由となります。もっとも、性交渉は夫婦の自由な性的意思決定の問題であり、これを強要することは許されないため、夫婦となったのに一度も性交渉を行わないなど例外的な事案で認められるものとなるでしょう。
・暴行、モラハラ
暴行の事実があった場合には、身体に対する不法行為として損害賠償金を請求できることとなるでしょう。診断書や診療報酬明細書など治療期間にかかった資料を収集しておきましょう。
(5)養育費・婚姻費用
養育費、婚姻費用については、権利者と義務者の基礎収入を算定し、子どもの生活費を計算していくことで定めることができます。権利者は収入が低い方、子どもの親権を有している方と考え、義務者は収入が高い方、子どもの親権を有していない方と考えればよいでしょう。権利者と義務者の基礎収入を把握するため、給与明細書、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書を入手しておきましょう。
家庭裁判所に養育費婚姻費用算定表が掲載されています。それぞれの収入を記載することで、おおよその受け取り金額を計算することができます。
(6)年金分割の準備
年金分割として、公的年金のうち2階建部分にあたる厚生年金保険について、年金額を算出する基礎となっている保険料納付実績を分割するといったことがありえます。注意点としては、年金分割で、専業主婦が夫の受給する年金のうち2分の1を受け取るといった制度ではなく、納付記録を分けるというもので、付け替えを行ったのちの標準報酬により算定することになります。
年金分割を行う場合には、年金分割のための情報通知書をいう書面を年金事務所などに確認して取り寄せを行いましょう。
(7)別居を行うかどうか
離婚について行うかどうかを経済的利益などから検討し、離婚をすることを決めた場合には、別居を行うといった選択を取る場合があり得ます。
離婚をする前にこちらの収入が低い場合には、別居をして、婚姻費用をもらいながら、生活再建を目指すといった手段を取る場合があります。別居を行うことで、離婚後に生活を行う準備を行うことができるでしょう。
6 慰謝料請求のみを行う手続きの流れ
(1)事前準備
配偶者に対して慰謝料請求を行う場合には、離婚や婚姻費用の未払いが発生する可能性があります。また、夫婦共有財産から慰謝料の支払いをされたとしても意味がありません。夫婦共有財産をこちらで預かっておき、特有財産からこちらの特有財産に対して慰謝料の支払いがなされるよう準備をしておきましょう。離婚や婚姻費用未払いが生じた場合において、離婚と同様に資料の準備を行っておくとよいでしょう。
(2)任意交渉
弁護士に依頼をして、任意交渉を開始する時期を決めておきましょう。
任意交渉では、証拠、獲得目標を明確にしておきましょう。裁判所においても認められる可能性が高い要求などであれば、相手方が弁護士に相談したとしても受け入れざるを得ないといった事態となります。弁護士を通じて、電話交渉とするのか、書面交渉とするのかを決め、交渉を始めていきましょう。
(3)和解条項
交渉によって慰謝料の金額がまとまったら、支払方法、他の条項をまとめて和解条項を作成します。浮気、不倫の案件においては他の条項として、今後の浮気、不倫を防止するために、接触禁止条項、違約金条項を定める場合もあります。誓約書などとして今後浮気が発覚した場合には離婚を行う、離婚後の対応条項を設けておきましょう。
(4)訴訟提起
慰謝料の金額について両者での話し合いがまとまらない場合には、民事訴訟を提起し、慰謝料の支払いを求めていくこととなるでしょう。
7 慰謝料請求+別居のみを行う場合
(1)事前準備
慰謝料請求と合わせて別居を行う場合には、別居の決定日、別居の向けての準備を整えておきましょう。別居を行う場合には、将来離婚への準備があることから財産分与についての証拠を収集しておきましょう。子どもについては主たる監護者でない場合には、子どもの連れ去りなどで問題となるケースがあります。事前に主たる監護者に当たりうるかどうかをよく考えておきましょう。
(2)婚姻費用
浮気、不倫について別居に至る場合には、相手方になぜ別居に至るのかを明確にしておきましょう。不貞行為や夫婦関係を継続し難い重大な事情が存在していることを示し、別居をすることに正当な理由があることを示しておきます。
また、婚姻費用の支払いを求めるために、婚姻費用申立ての調停を申し立てることで婚姻費用の支払開始時期を明確にしておくことができるでしょう。
(3)別居調停
同居をすることは困難であるために、当分の間別居することに合意をするものです。子どもの監護権などで問題となる案件などでは子どもの関係などを定めるという意味で別居調停を家庭裁判所で協議し、どのような条件で別居を続けるのかを定めることがあり得るでしょう。
8 離婚請求、慰謝料請求を行う場合
(1)事前準備
離婚請求と共に慰謝料請求を行う場合には、離婚請求の中での慰謝料も併せて手続きを進めていくこととなるでしょう。離婚請求の流れとしては、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の流れを経て離婚に至ることとなります。
離婚で損をしないためには、どれだけ離婚前に財産関係など資料をしっかりと準備しておくことです。離婚をしたいと話をする前に、今後の生活や財産関係、子どもの関係に向けても準備をしっかりと整えおきましょう。
(2)任意交渉・協議離婚
離婚請求において、弁護士を通じて協議離婚を行うのか、本人で協議離婚を行うのかを選択することがあり得ます。相手方によっては、協議離婚書を用意し、本人での交渉としたほうが相手方も弁護士を入れずに協議がまとまる場合もあり、協議離婚書を作成し、示すといったパターンを試す実益もありえるでしょう。
もっとも、浮気、不倫をした配偶者と話をしたくない、相手方に対してうまく話しをもっていくことができないとの事情がある場合には、弁護士に当初より依頼をして進めていきましょう。離婚について条件を受け入れるのか、財産分与などについてどのような根拠でおこのような金額を示しているのか、有責配偶者である場合には今後どのようなことが予想されるのかといったことを専門家から交渉で伝えることで、協議離婚にて解決ができる場合があるでしょう。
養育費など将来に向けて支払いが求められるものについては、執行認諾付公正証書での作成を目指していくこととなるでしょう。
(3)調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所での調停委員を間に入れた話し合いを行うものです。調停離婚であった場合には、婚姻費用の支払いなど付随的な事項についても準備をしておきましょう。慰謝料についても調停離婚において請求、協議を行っていくこととなるでしょう。あくまで話し合いであるため、相手方が調停を拒否した場合には裁判離婚となっていきますが、裁判離婚でも認められる可能性が高い事項については、長期化させてもメリットが少ないとして相手方が受け入れる可能性が高まるでしょう。
調停離婚で話し合いがまとまった場合には、調停条項を作成し、調停調書をもって離婚届を提出することで離婚することになります。調停条項において養育費や慰謝料などをしっかりと定めておきましょう。
(4)訴訟離婚
調停離婚が不調に終わった場合には、裁判離婚に移行させることができます。調停前置主義が取られているため、原則としては、裁判離婚を先に提起することはできません。裁判離婚は家庭裁判所での通常の裁判手続を行うことになりますので、訴状を作成し、家庭裁判所に提出することとなります。離婚原因について相手方が否認した場合には、原告において主張立証をしなければなりません。
離婚原因が認容されるレベルである場合には、最終的には裁判離婚によって離婚を行うことができるでしょう。現実に判決において、離婚まで行くケースは全体の離婚の中ではかなり少ないこととなります。
9 終わりに
配偶者に対する不貞行為慰謝料の請求については、婚姻費用の未払い、離婚紛争に発展していくこともあるため、離婚をするのかどうかを請求前に考えておくべきものとなります。浮気、不倫慰謝料のみならず、離婚慰謝料や財産分与においてどれだけの経済的利益を得られるかどうかも大切な要素となってくるでしょう。天王寺総合法律事務所では、不貞行為慰謝料事件や離婚事件について請求案件を取り扱った弁護士が所属しておりますので、弁護士をご依頼されたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。